112 夢の再生可能エネルギーは海にある

今年度も規制制度改革分科会に参加させて頂き、特にエネルギーWGにて再生可能エネルギー(以下再エネと略)の推進を阻む規制の緩和及び改定についての議論を行っている。先週から始まった関係省庁ヒアリングでは、これまで閣議決定された内容について、その進捗状況を各省庁から伺っている。はっきり言って、殆ど省庁において、顕著な進捗が見られない。この日本という国は、国家として極めて重要な位置づけにあるはずの「閣議決定」までもが官僚たちに全く無視されているか骨抜きにされている。

再エネ推進を阻害している関係法案は、森林法、農地法、国有林法、電気事業法、工場立地法、河川法、建築基準法、自然公園法、温泉法、廃棄物処理法の10本の法律である。先日、各再エネ推進団体から事情聴取した限りでは、どれも日本を滅ぼす悪法としか言いようがない。もともとの立法精神は、日本が世界に誇る美しい自然を守る法律であった。もちろん今でも、その役割を果たしている。

原子力発電が日本の電力の大半を担っていた時代には、こうした自然には人工的な手を付けないで、これまであるがままの姿で保全させることは大事な意味を持っていたに違いない。しかし、原子力発電が、その事故によって放射能汚染という人類存亡の危機に陥れることが、判った以上は、その代替手段として再エネを用いたエネルギー政策を推進せざるを得ないわけだが、残念ながら、どの再エネも何らかの形で自然に何らかの影響を与えることは避けられない。特に、美観といわれると、これは人工物である限り、それ自体が美観を損ねると言われれば何もできない。

案の定、国土交通省河川局はドイツでは5,000か所もあると言われる、小水力発電に対しても閣議決定に真っ向から反対する。小水力発電は取水するわけではないのに、水利権に対して従来通り極めて保守的である。彼らの論理は「特区を作れば何でも簡単な手続きで出来るようになる」と主張する。大体、特区自体が簡単には認められないのにである。「東日本は、今、特区が簡単に認められるから、それでやれ」と言う。しかし、今の日本で電力が足りないのは東日本ではなくて、原発依存度が高かった西日本なのだと言えば、「所詮、小水力で原発の代替など出来るわけがない」と捨て台詞を吐いて帰って行った。

次の環境省国立公園課も同じ調子である。とにかく国立公園内には、地熱発電所も、風力発電所も一切作らせないという頑なな態度である。彼らは既に閣議決定が出ているのに抵抗するわけだ。最後には誇りに満ちた顔で、「尾瀬が原を水没させなかったのは日本の環境行政の英知だ」と抜かしおる。確かに、チェルノブイ原発周辺の立ち入り禁止区域は、動植物の天国で、素晴らしい自然公園になっているという。環境省は、まさか日本中が放射能汚染地域になれば良いと思っているのではないかと疑わざるを得ない。人間が関わる限り、何らかの自然破壊は起きるのだ。問題は、その程度である。

こうした議論を続けていると、狭い国土しかない日本で再エネなど振興できるのだろうか?と失意せざるを得ない。どこかで何かしようとすれば、必ず既得権者との争いが起きる。そして、自然擁護者との戦いもある。例えば、風力発電のアセスメントには、日本野鳥の会まで入っているのである。まあ、環境省の話を聞いていると、彼らこそ、生粋の原発推進論者だったのではと思わざるを得ない。放射能は美観も損なわないし、CO2も出さないし、ごく一部の地域の人が我慢すれば原発は莫大なエネルギーを出す。森林も山も川も、事故を起こさない限り汚染することはない。こういう論理なのだろうか?

一昨日、大学時代のクラス会があった。私たちのクラスは電気電子工学科だったので、エネルギー問題に対する関心は高い。当然、東京電力に勤務していた者もいる。その中で、企業を早くに退職し大学の先生になった友人が大変興味深い話をし始めた。

地球上の人類には3種類のエネルギーが利用できるのだという。太陽エネルギーと核分裂エネルギーと地殻(マグマ)のエネルギーだ。従来、最も有望視されていた核分裂エネルギーは、どうもだめだ。そうなると太陽か、マグマだが、太陽の方が圧倒的に量が多いという。しかし、その中身は太陽光や太陽熱ではなくて、海中に蓄えられたエネルギーだと言うのである。その最たるものが海流だという。幸い、日本は世界最大の海流である、黒潮が近海を流れているので、最も恵まれているのだと友人は主張する。但し、黒潮も近いとはいえ、日本の沿岸から少し離れているので送電線を張るのは大変だから、一度水を電気分解して水素エネルギーに変換して輸送すれば安価にエネルギー運搬が出来るという。この黒潮だけで、他の再エネなど無くても十分間に合うのだという。

さて、この話はどっかで聞いた話と似ているなと思った。そうだ、今月13日に会津大学復興フォーラムで東大生産技術研究所の木下先生から海洋エネルギーを用いた発電について面白い話を伺った。先ほどの黒潮の話と似たようなストーリーである。但し、この木下先生の話は単なるアイデアではない。英国で既に具体的に計画されている話である。英国政府は英国の沿岸を幾つかの区域に分けて、携帯電話同様、海洋区域のオークションを行っている。英国では潮力発電は既に夢物語ではないのである。

木下先生は東大を卒業後英国のサザンプトン大学で海洋学を学ばれている。会津大学の角山学長によれば木下先生は、まさに会津を含む福島復興のシンボルなのだという。それは、木下先生が、幼少時代を白虎隊に参加し、その後、明治政府の圧力にもめげず、東大総長を2度も務められた山川健次郎先生のひ孫にあたられるからだそうだ。

その会津の歴史は、ともかくとして、木下先生の話は雄大で、夢があっていいなと思ったのは私だけではないだろう。狭い日本の国土で、国交省河川局や環境省の国立公園課や廃棄物処理課と話をしていても、論理が矮小で面白くもなんともない。もう再エネに関して地上の話はやめたくなった。霞が関から外海へ出よう。日本近海の黒潮を取り込んで日本のエネルギー問題を一気に解決できたら、きっとスッキリするだろう。今後は、こうした前向きの議論をしたい。

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