109 震災復興について

今日、2012年1月17日は阪神淡路大震災が起きて17年目にあたる。 あのように悲惨な大震災が20年も経たないうちに、また起きるとは一体 だれが想像しただろうか? その阪神淡路大震災が起きた翌日から医師と して救助活動に従事した私の弟は2週間後に廃人のようになって帰ってきた。 それから半年間は、肉体的にも精神的にも元の元気な状態には戻れなかった。 「一体どうしたんだ?」と私が尋ねても、「兄貴、俺は神戸で地獄を見た」 としか答えなかった弟。倒壊したビルや家屋の中で、TVでは放映できない 悲惨な地獄絵図を見たに違いない。

今日、Facebookの中で、石巻で在宅医療チームを率いる武藤医師が、 「雪が降って来ると、あの日を思い出して泣き出す子供たちが多い」と語っ ていた。真っ黒な山のような津波に襲われた子供たちも、私の弟と同様、 あの日、地獄絵図を見たに違いない。幼い心の中に拭い難いトラウマと なってしまったことが何とも痛ましい。いまだに命だけは取り留めた多くの被災 者達が、心のケアを必要としている。そして、その心のケアに従事している 方も、また被災者であり、ケアの仕事の中で、自らも、フラッシュバック を起こして苦しんでいる。

そうした現地の痛みは、やはり東京から被災地に行ってもなかなか簡単には 理解できるものではないだろう。私は、何年間もの間、毎月アメリカに出張して、 アメリカのことは何でも知っていたつもりだったが、いざ、アメリカに住んで みると、アメリカのことを何も知らないことに気が付いた。出張に行くこと と住んでみることは大違いなのだ。「河北新報のいちばん長い一日」という 本を読んで、永年、被災地に住み、このたび被災者となった記者が書く記事の 迫力に圧倒された。何人も、涙なくしては最後まで読み切れない本である。

その河北新報社が、正月3日の社説で、東北再生への提言について論じている。 まさに今年を東北復興元年として新たな気持ちで生きていこうという趣旨で 書かれているが、東京で論じられている浮ついた理想論では全くない。やはり、 東京発の全国紙では論じられない、地元紙ならではの地元密着型の復興論と なっている。まず、復興の基本理念は①「おこす」:創造的な発想、 ②「むすぶ」:人や地域のきずな、③「ひらく」;グローバルな視野と、3つ のポイントで纏められている。

そして、何よりも重要なことは、「制度を地域に当てはめる」というTOP ダウンの発想ではなくて、住民一人一人の多様なニーズを支援し生活再建を 助けていくという逆転の発想が重要だと説く。地勢や伝統文化、産業構造も それぞれ異なる被災地において、一番大事なことは共助の精神で結ばれた コミュニティーの再建だというのである。こうした多様性こそ、東北再生の エンジンにしていくべきだと主張する。

特に、最も津波の被害が大きかった三陸沿岸地域の主産業は、やはり水産業 である。それも、単に魚を獲るということでは町の雇用は満たしきれない。 加工・流通を伴う水産都市としての6次産業化を図らなければならない。現実、 三陸各地の水産加工業の原料の大半は海外からの輸入水産物であった。基本 理念の中にある「グローバルな視野」は単なるお題目では済まない現実がある。

そして、将来の脱原発に向けてのエネルギー政策としても、多様性の概念は 活きてくる。東北地区は、日本の中でも風力、地熱、小水力、木質バイオと いった再生可能エネルギー源が豊富にある。これらのエネルギー源を利用して 各地域に適合した多極分散型での地産地消エネルギー政策をとって行くべきだ と河北新報は提言をしている。

そして、最も重要な提言は、こうした地元住民が望む自立的な復興を果たす には、この東北に、県境をまたぐ、もう一つの「政府」が必要だと説く。 名付けて「東北復興共同体」と呼んでいる。そう、もはや日本政府には地方に ばら撒く余剰の財源など持ち合わせていない。永田町、霞が関を中心とした 中央集権で全国の地域を指導していく体制には限界が来ている。

そして、私が、今、所属している内閣府の規制・制度改革分科会、エネルギー WGにおいて、誰が一番規制改革に後ろ向きかと言えば、それは霞が関では なくて実際に許認可権を持っている地方自治体であることに驚かされる。 霞が関は、局長通達、課長通達で、規制の法律など、如何様にも例外を作る ことが出来る。しかし、最後は地方自治体の担当者や首長が、「NO」と 言えば終わりである。だからこそ、霞が関の官僚がせっかく「特区」など 作ってもそれが「猫に小判」に終わることが多いのが現実だ。

河北新報が論じるように、世直しは、地方が、自立的に「改革の志」を持た ない限り、現実のものとはならないのだ。東北の復興のためには、東北の地に、 東北の人々による、東北のための「政府」を作らないと、本当の復興は出来 ないと私もそう思う。

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