457    いつまで続くか、この憂鬱な毎日が

昨秋、「2022年 再起動する社会」という本を生まれて初めて上梓した。2022年の半ばになれば、2年半に及ぶコロナ禍もようやく先が見えてきて久しぶりに今までの普通の生活が少しずつ戻ってくるだろうという希望が見えてきたからだ。もちろん、全てが今まで通りではなく、この2年半で変化した新たな暮らし方に沿って私たちの生活も大きく進化すると考えてきた。今年になってから、そういう話を講演として既に何度かさせて頂いている。

しかし、今年2月24日から始まったロシアのウクライナ侵攻は、コロナ禍以上に、この先の私たちの生活を見えづらくしてきている。最近、著名な芸能人が自殺に追い込まれているのも、こうした困難な状況と全く無縁ではないだろう。主要国によるロシアへの制裁で苦しむのはロシアだけではない。天然ガス、石油、小麦など生きていく上で必要不可欠なものが次々と値上がりしていけば、世界中の庶民の生活がますます苦しくなるだろう。

特に、日本の通貨である「円」がどんどん下がっていることも、こうした憂鬱さが加速し、ますます気後れしていく。1998年私がアメリカに赴任した時にも一ドル140円近くまで円安が進行して車を買うのに両親からの借金を殆ど使ってしまい、さて、これからどうするかと不安になったが、今、日本中の会社から海外に派遣されている駐在員も、金銭的な問題で、これからますます悩ましくなっていくだろう。

一体、私たちはこれから何を目指して生きていけば良いのか、じっくり考えていかなければならない。ただ、今日の日経新聞でも2021年度の東証プライム市場に上場する企業の多くが最高益を出していることにも注目しなければならない。このコロナ禍の中で多くの企業がデジタルで大きな革新を遂げている。もちろん、こうしたデジタル変革の中で職を失った人々も多く、日本社会全体としては国民の中で一体感を失いつつあることにも留意する必要があるだろう。

私たちは、こうした社会の大きなデジタル変化に対応できるよう常に学んでいかなければばらないわけだが、そうした環境が多くの国民に提供できているかについて、よく考えていく必要がある。現在、IT企業や多くのデジタル技術者を抱える企業が日常的な人材流出に悩んでいる。各企業とも高額の報酬を提供することでデジタル人材の中途採用を積極的に進めており、これに対応して転職する人材がどんどん増加しているからだ。

こうした若年層の転職活動が活発になってから既に2−3年経っているわけだが、彼らが既に次の職場に転職している例も目立ちつつある。新卒一括採用が標準となっている日本社会で、欧米のようにキャリア採用が一般化するまでには未だ時間がかかるのは致し方ないと思うが、2−3年で次々と転職を繰り返す人達が増えてくると、それが転職する人材と受け入れる会社の体制とどちらに問題があるのかをよく見極めなくてはならない。

私自身も、3回ほど転職することを考えた時期があったが、さて他社で自分をどのように評価してくれるものか? 一体、自分には、どれだけの価値があるのだろうか?と考えているうちに良い年になってしまったような気がする。それでも、他社で役に立つ技量とはどんなものかと、いろいろ勉強したことが役員になってから少しは役に立ったような気もしている。それでも、当時の会社組織の中では勉強すると言っても日常的にそうした機会が与えられているわけでもないので、機会があれば外に出て多くの方と話をしてみることが多かった。

しかし、今のようなコロナ禍では、そうした外部との接触機会も少なくなっているのではないかと危惧している。オンラインで幅広く会議できると言っても、それは日常的に話をしているサークルの中に限定されるだろうし、今まで全く知らない世界の方々と話をするという機会はなかなか見つけづらいだろう。ロシアとウクライナの戦いは暫く続くかもしれないが、せめてコロナ禍に関しては、今までに学んだことを活かして普通の生活で可能な対処方法をとって、これまでの生き方に戻りたいと考えている。お陰様で、今月は、あと3回ほど講演の予定が入っている。さあ、もう少し気合を入れて頑張ろう。

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