423    ポスト・コロナ時代に向けて (3)

COVID-19の感染が広がることによって、県外ナンバーの車に嫌がらせをする排他的行為が、日本中で起きている。これまで地域にとって、富をもたらす人々が、禍をもたらす人々へと明らかに認識が変わってしまったからだ。世界各地や日本の各地を訪れてみたいという知的な好奇心は誰しもあるものだが、訪れる土地の人々が歓迎してくれないとうまくいかない。当分の間、「移動」を伴う観光という生業は極めて難しくなってくるだろう。

このCOVID-19が瞬く間に世界中に広まり、夥しい数の感染者、犠牲者をだしたのも、多くの人々が世界中を瞬時に「移動」出来る様になったからだ。この大量「移動」こそが、パンデミック発生の元凶となった。それは国を超える「移動」だけでなく、大都市における公共交通を使った通勤・通学のための「移動」も含まれている。そのため感染拡大の防止策として、出入国制限、あるいはテレワークやWeb会議、オンライン授業によって「移動」を代替しようと試みている。

少なくとも日本では、この状態が、あと2−3ヶ月続き、一時収束したとしても秋には第二波が来ると言われている。世界的に見れば、COVID-19が発生する以前に戻るには、あと2-3年かかるだろう。この間に、人々が受けた心の傷は深く、地域振興のために、日本全国から、あるいは世界中から多くの観光客に来て欲しいというメンタリティーに簡単には戻れない。インバウンド景気というスローガンも、しばらくの間は、死語になるだろう。今後、飛行機や新幹線の利用がビジネス用途だけに限定されるとなれば、料金も必然的に高額になる。

今回、世界中の人々が自宅軟禁状態になった結果、原油が大量に余り、先物価格がマイナスとなった。世界中の「移動」に必要な原油の量が、いかに膨大かを思い知らされた。現在の二酸化炭素の発生の大半が「移動」によって生じていることの証でもある。現在の鎖国状態が、今後も続くとすれば懸案の低炭素化は一気に進展する。長期型投資で大きな成功を収めてきたバフェット氏もデルタ航空の筆頭株主を降りるだけでなく、他の全ての航空会社の株式も含めて売却したという。まさに世界は新たな常態に突入した。

私自身も、この2ヶ月の間に、社外取締役を務める3社において、取締役会が全てWeb会議になった。使用されるシステムはTeams , ZOOM , BlueJeans(Verizon)と、各社とも異なるが、操作方法は殆ど差がないので、直ぐに使えるのは便利である。使いこなしている内に、だんだん向上心が湧いてきて、PC標準装備のものでは満足できず、専用のWebカメラ、外付けスピーカ・マイクと顔を明るくするためのリングライトを購入した。

また、今回のCOVID-19騒動で、3月からは、一部を除いて全ての講演会が中止や延期となった。例外は、全社各拠点向けの社内講習会と、この度各大学で導入されつつあるオンライン授業である。ここでは、Web会議の画面にPowerPointベースの講演資料を投影しなければならない。このため講演資料を表示する、もう一台のPCのHDMI出力を変換してWeb会議用PCへUSB経由で入力できるビデオ変換機器も急遽購入した。こうした一連の周辺装置を購入したので、最早どんな要請があっても怖くない。自宅に居ながらにして何でも出来る自信がついた。

さらに、最近は、シリコンバレーの人達を交えたWeb会議も始めている。日本は朝方、シリコンバレーは夕方がお互いの共通タイムである。日本側も東京、大阪における、それぞれの自宅、シリコンバレー側も自宅から参加するのだが、結構、深い話まで出来ている。これまで数年、シリコンバレーのスタートアップを訪問し、お互いに自分の技術を披露しあって協業の可能性を探るというツアーを続けてきたが、今年は、こういう状況なので従来通りの形では実現が難しい。いっそ、ツアー自体もWebで行ったらどうかという話も出てきている。

本来は、直接会って、お互いに膝を突き合わせて、相手の息遣いを感じながら熱い議論をする方が良いに決まっている。しかし、協業の可能性という話は、うまく行く可能性の方が遥かに低い。そのために、長時間の移動と高額の経費を使うというのも少しもったいないという感じもする。こうしてWeb会議でシリコンバレーのスタートアップを多数訪問できれば、もっと多くの機会が増えるだろうし、協業の実現性も今よりも高まるに違いない。

さて、ビジネス世界を除いた「移動」の中心は、やはり観光である。私自身も、日本は47都道府県、世界は約50か国を訪れた。この旅から得られた知見や感動は計り知れない。これからの若い人たちにも、どんどん世界を見て欲しいし、リタイアしたシニア世代の方々もぜひ各地を訪れて楽しんで頂きたいと思う。しかし、COVID-19の感染禍は、世界中の人々の心を深く蝕んでいる。もう、しばらくの間は、他国や他地域からの訪問者を今まで通りに受け入れることができない。特にCOVID-19が中国発ということで、日本を含む東アジア人が歓迎されることを期待するのは極めて難しい。

それでは、ポスト・コロナ時代の観光業はどういう形に変わっていくだろうか? それはビジネスの世界がネットを使ったテレワークで凌いでいるように、観光もテレポーテーションを駆使するようになるだろう。つまり、ドラえもんの「どこでもドア」だ。実現方法は、もちろん、8K次世代VR(200度広角)しかない。せっかく、長時間、飛行機を乗り継いで、目的の場所に行ったのに、天気は最悪、あるいは想定外の混雑など、酷い経験をされたこともあるだろう。しかし、この8K次世代VRなら、最高の天気、最高の条件で撮影されたベストな映像がベースなので、実物以上に満足度は高いに違いない。

今後、観光業はコンテンツ提供業に変貌することになるだろう。あるいは、こうした観光地における名産品の物販、あるいは広告と抱き合わせになるかも知れない。8KVRによって訪れる観光客の人数が、従来の100倍、1,000倍になれば、これまでの観光業を凌ぐ、大規模なビジネスに成長する可能性は十分にある。ポスト・コロナ時代には、従来ビジネスとは大きなDisrupt(断絶)を引き起こすかも知れないが、決して暗い話ばかりではない。新たなチャンスに向けて、今から準備をしておこう。

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