388 お茶の水女子大での講義 (1)

4月25日、お茶の水女子大理系大学院にて「AI(人工知能)と働き方改革」というテーマで、90分の講義を行わせて頂いた。私が行った社会人の講義は、第2回目だったが、第一回の講義があまりに好評で、本来対象である理系大学院生70人の他に、文系大学院からも20人が参加され、会場は90人の才媛の熱気で溢れ返っていた。思わず、私も年甲斐もなく張り切ってしまい、講義が終わった直後には、もう、立っていられないほど消耗しきってしまった。

しかし、講義中の90人の真剣な目は、私を刺すような殺気があった。日本の頂点に君臨する女子大のトップグループにいる才媛たちは、私の講演を、どのように聴き、何を感じてくれたのだろうか? その彼女たちの感想を、先ほど、今回の社会人講義を主宰して下さった、松下教授より送って頂いた。読むにつけて、私の方が感動してしまうことばかりである。今の国会の目玉法案とも言われている「働き方改革」ではあるが、日本の将来をリードする若い人たちは、ここまで先を読み、真剣に考えている。それと比較すれば、国会での議論は、まさに周回遅れにしか見えない。彼女たちの、厳しく、そして先見性のある感想をランダムに紹介して見たい。
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AIや働き方改革について、ニュースや記事を読んでもピンとこないと何となく違和感を感じていたのですが、今日の講義でメディアでは聞けない話を聞いて納得したことがいくつもありました。世界で変わりゆく時代の技術や考え方と、日本の制度や考え方のズレに対して、どうアプローチすべきか、就職する前に決心、決断する必要があると思いました。

これからの未来を生きていくためには、フレキシブルな考え方と広い視野が必要であると気がつかされました。従来の働き方は非常に古典的で生産性に欠けることがわかり、それでは世界に渡り合えないどころか生き残ることすら出来ないという危機感を抱きました。これから社会に出ていく身をとしては、自分にしか出来ない技を身につけ新しい考えを生み出していけるような広い視野とフレキシブルな姿勢を大切にしていきたいと思いました。

確かに、日本はサービスを受ける側も、提供する側もなぜか過剰なものを求めているような気がしてきました。日本の真面目さは良い所でもありますが、悪いところでもあると思いました。平凡な私が、講義で紹介されたような人たちと同じような働き方をしても生き残れないと思いますが、私自身が、自分で幸せだと感じる働き方をしたいと思います。

海外の成功している企業で取り入れていることは、日本のような軍隊方式ではなくて、フラットな組織で、様々な考え方を否定しない寛容さだと仰っていましたが、今の日本の会社組織とはあまりに異なりすぎていて、直ぐに全てを取り入れるのは難しいと思います。そうは言っても、それでは世界から取り残されるので、少しずつでも変えていくことが必要だと思いました。

最近、AIが話題になっていて、将来、多くの仕事がAIにとって代わられるだろうなとは思っていましたが、単純労働などあまり知的ではない仕事が対象で、医師や弁護士など高度な知的労働者は心配ないだろうと思っていました。確かに、人間より頭がよくタフなAIであれば、その可能性は高いなと今回改めて考えさせられてしまいました。

労働生産性が低い分野で、進化したAIを導入すれば効率が上がると思いましたが、やはり、現実問題、人は稼ぐために働いています。そんな中で、わざと効率を悪くして働き口を増やしている日本の現状がとても虚しく思えました。

人工知能が発達して、今後さらに様々なことに導入されていく中で、それでもなお人間にしか出来ないこと、さらには自分にしか出来ないことを今から真剣に考えて生きたいと思いました。自分にしかない強みを育んで、それを活かした仕事をしたいと思います。

在宅勤務は良さそうだなと思っていたのですが、今日のお話を聞いて、確かに一人で考えことをしたり、メールやLINEで意見を聞くより、直接会って話をした方が、色々な意見を取り入れられるし、気分転換もできるし、頭もよく回転するなと思い、会社に行くことは大切だなと思いました。

「医師で一番大切なのは医学知識よりも患者との会話能力」という、お話がありましたが、どんな活動においてもコミュニケーションはとても大事だなと思いました。今後、AIがどうなるのかわかりませんが、少なくとも人間の「あたたかさ」や感情的な部分を代替することができないと思うので、生身の人間と対面して行われるコミュニケーションはとても重要だと思いました。企業や研究室など、複数の人が関わる場での風通しの良い環境が重要だと思います。

日本は働きすぎとよく言われているので、生産性が低いのは意外でした。今回の講義で、日本の会社の働き方のどこに問題があるのかよくわかりました。

自分が、就職に対して思っていた違和感が少し明確になりました。終身雇用や一つの組織にずっと所属し続ける非効率・面白みのなさ、アメリカでは、皆が、普通に思っていることなのですね。私だけがおかしいのではないと安心しました。

日本社会とは一線を画した米国における働き方の常識やルールのお話は大変興味深く、関心を持ちました。どうして、日本も米国のようにならないのだろうかと心から思いました。日本社会の働き方改革が本来の意味で行われる、実現する日がくるとすれば、その時、日本社会全体が大きく変わる時なのではと思いました。

生産性のお話、大変勉強になりました。まさに、私も日本式システム開発が嫌で、外資系IT企業に就職を決めたところでした。「日本らしさ」と美化されている「生産性の低さ」をびしりと指摘頂いた、この講座、お茶大の色々な学生に聴いて欲しいです。

丁度、インターン募集が始まります。そこで、就活サイトに登録したり、様々な会社を調べています。私は、これまで、初任給や福利厚生、勤務時間をとても気にしていました。しかし、今日のお話を聞いて、自分の行く会社が10年後、20年後に残っているかも分からない上に、給与も勤務時間も、将来は絶対に変わっているはずです。大切なことは、どこの会社に勤めるということではなくて、そこで、自分は何ができるかという点にあると改めて気づかされました。
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いや、驚きました。これらの感想文のほうが、私の講義より遥かに立派な内容です。こんなに、真剣に受け止めて頂けるのなら、また、彼女たちに、別な話もしてみようかなと思いました。ただ、一つだけ気になることがあります。最近、女子学生の方が男子学生より遥かに優秀で感受性も高くなっているということはないのでしょうか?

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