369 北朝鮮のICBM発射実験成功について

防衛省の発表によると、本日午前9時39分ごろ、北朝鮮西岸から弾道ミサイルが発射され、およそ40分間飛行して日本海の日本の排他的経済水域内に落下したと推定されるとのこと。そして、本日午後3時30分、北朝鮮はICBMの実験に成功したと発表した。しかし、米軍は、すぐさま、この北朝鮮の発表は誤りで、今回の実験は中距離ミサイルに過ぎないと発表した。

この米軍の発表は、極めて冷静である。万が一、もし米軍が今回の北朝鮮のミサイル実験をICBMと認めたとしたら、トランプ政権は北朝鮮がレッドラインを超えたとして、すぐさま北朝鮮に対して先制攻撃を開始していたかもしれないからだ。その結果、日本は北朝鮮の反撃を受けることは間違いない。この点で、私たちは、米国の冷静な判断に感謝しなければならないだろう。しかし、今回の北朝鮮のミサイル実験は米国の判断が正しかったとしても、彼らが本格的なICBMの実験成功を成し遂げるのに、それほど多くの時間を必要とはしないだろう。

さて、どうして北朝鮮が、これほどのスピードでミサイル開発を成功させることが出来たかについて、我々は認識を新たにしなくてはならない。彼らは、中国からもロシアからも正式な形で技術援助は受けていない。彼らの技術開発の成功理由は、明らかにハッカー技術の成果である。英語の得意なエンジニアの養成と、ハッカー・エンジニアの養成によって北朝鮮は米国の最新ミサイル技術の取得を可能としたのである。北朝鮮は、強力なハッカー技術によって、他国の最新技術を盗むことで開発時間を大幅に節約している。

しかし、そうは言っても、設計図面をアメリカから盗んだとして、部品の調達はどうするのかという深刻な問題は残る。しかし、少なくとも宇宙工学においては、その心配は全くない。宇宙空間は極めて強い放射線にさらされているので、微細加工の最先端の半導体は使えないのだ。さらに、耐衝撃性、耐高温性など考慮すると、宇宙工学の分野では、いわゆる旧世代のローテク技術部品しか使えない。そうした部品は、秋葉原電気街のジャンク屋で簡単に手に入るものである。ハイテク分野の電子部品の輸出規制をしても、彼らは全く困らないのである。

よく考えてみれば、世界最先端の技術を多数保持しているアメリカでさえ、とうとうスペースシャトルの技術を断念した。誰もがご存知のように、現在、宇宙ステーションに人や荷物を運んでいるのはロシアが大昔に開発したソユーズ・ロケットである。そう、宇宙工学は実は恐るべきローテクなのだ。欧州が世界に誇るアリアン・スペースにおいても、コストパフォーマンスで一番優れているのはロシアから技術を買収したソユーズ・シリーズである。あの、スプートニクの系譜をひく、ロシアのソユーズは今でも健在である。

私は、縁があって、中国のハルビン工業大学でイノベーションに関する講演をしたことがある。実は、ハルビン工業大学は中国のロケット技術開発のメッカである。なぜなら、ハルビン工業大学は、冷戦時代に中国とロシアが友好関係にあった時に、ロシアの協力で出来た、中国最初の理系大学であった。ハルビン工業大学のロケット工学は全てロシアから受け継いだものである。私は、講演のお礼として、ハルビン工業大学の宇宙工学開発センターのショールームを見せて頂いた。

この話を、元JAXA理事長であった立川さんにすると、「お前、ハルビン工業大学なんてJAXAの連中は絶対に行けないよ」と羨ましがれるのだが、私のショールームを見た感想はちょっと違う。何しろ、中国が誇るロケットが全て展示されているのだが、どれも粗雑な作りで、精巧なマシンという感じが全くしなかった。私は、日本のロケットは三菱重工業の名古屋工場でちらっと見ただけで、多くを語れないが、ひょっとするとロケット工学というのは、ローテクの塊ではないのかと思われた。だとしたら、ますます北朝鮮の脅威は非常に大きいと言わざるを得ない。

そう、ロケットと言えば、今から30年ほど前に、私は、富士通の仲間と一緒に、フロリダ州のケープ・カナベラルのスペースシャトル発射基地を訪れたことがある。基地に直接は入れないのだが、観光茶屋みたいなところがあり、そこからお金を払ってバスに乗ると、スペースシャトルの発射台の真下まで連れて行ってくれて、間近にスペースシャトルを見ることが出来た。9.11ニューヨク同時テロの前はアメリカも実に大らかだった。あと2週間で発射されるスペースシャトルは、組立工場からレール上を運ばれて発射台に据え付けられていた。当時は、ケープ・カナベラルでは、広大な土地があり、発射台は使い捨てであった。高温で傷んだ発射台を修理するよりは新しい発射台を建設した方が安いと判断したのだろうか。そうした十分な開発費用を使い尽くしたスペースシャトルが役目を終えたこと自体、私は今でも信じられない。

さて、今回の北朝鮮のICBM実験成功のニュースをアメリカの人々は、どのように感じているのだろうか。残念ながら、多くのアメリカ人は、この北朝鮮のICBMについて全く関心を示していない。彼らは、本当に実害を受けるまで、北朝鮮よりも、今は、むしろISの方の関心が高い。ISは、既に、米国本土に深刻なテロを起こしているからだ。しかし、もし、北朝鮮がICBMを成功させ、万が一、米国のどこかの都市を攻撃した場合には、米国は北朝鮮という国家と国民を、この地球上から完全に抹殺していることは多分間違いない。そうならないよう、北朝鮮の自制を心から望みたい。

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