290    私にとっての2014年とは

私のとっての2014年は、本当にかけがえのない1年であった。まず最初に、昨年から1年間、鷺沼教会の松尾神父様から勉強をしてきて、ようやく許された洗礼の儀式のことをお話ししなければならない。私はカトリックの洗礼を受けていた妻と結婚する時に、妻が所属していた山形カトリック教会に3回通って、にわか教育を受けている。その妻が学生時代に洗礼を受けたのは東京渋谷の初台教会であった。私の前任者として、同じく富士通の副会長をされ、また同じく富士通総研の会長をされた高島さんが初台教会の信者さまで、亡くなられた後も、初台教会のクリプタに眠られておられるのも本当に不思議なご縁である。

1年間、毎週、松尾神父様の聖書の講義を受けて、ようやく復活祭に洗礼を許されたのにも関わらず、今年の復活祭、4月20日、私は1週間の米国出張を終えて、ニューヨークJFK空港で日本への帰国便を待っていた。そのため二週間後のGWの真っただ中の5月4日が私の洗礼の日と定められた。GWの後、松尾神父さまが、鷺沼教会の信者さまたちとスペインへ巡礼の旅に出てしまわれるからだった。私の代父は、栄光学園高校時代に洗礼を受け、東大の学生時代からの親友で、同じく富士通に勤務していた岩渕さん。

そして1年間、松尾神父さまに一緒に講義を受けていた二人の仲間も、GWにも関わらず、私の洗礼式に出席して頂いた。そうした、皆の祝福を受けて私は無事洗礼を受けることが出来た。洗礼名は、今年NHKの大河ドラマの主人公だった黒田官兵衛と同じSimeonにした。神父さまも、「記憶に残る良い名前だと思いますよ」と賛同して下さった。黒田官兵衛は自身の洗礼名Simeonだけでなく、「如水」という号までもユダヤ人の英雄であるヨシュアから取っているほどの生粋のキリスト教信者である。

無事、洗礼を受けた5月の下旬、富士通の本社人事から6月の株主総会の時期をもって退任する旨の内示を受けた。1970年に入社して、44年間の永きに渡って勤めさせて頂いたことには本当に感謝している。しかし、ここで不思議なことが起きた。退任の内示を受ける前の日に、人生で初のホールインワンをしてしまったのだ。しかも、富士通のパートナー様をお招きして開催した女子プロとのプロアマ戦である。何と、ショットガン32組、132人の大コンペでホールインワンをやってしまった。普段、グリーンにも滅多に乗らない私が何とホールインワンをやるなんて、全く考えられないことが起きた。人生は本当にわからないもので、油断は禁物である。

そして、今年は、これだけでは終わらなかった。いよいよ正式に退任する6月25日の当日に、NHKで最も高視聴率のニュース番組、ニュースウオッチナイン(NW9)に私が登場することになったのだ。NHKが企画した特集番組「社外取締役」にて、私と私が社外取締役を務めさせて頂いている日立造船が取り上げられた。たった7分ほどであったが、このゴールデンアワーのヒット番組での反響は絶大で、多くの方々より「見た!見た!」との連絡を頂いた。まさに、私にとって、この上ない一生の記念となった。

そういう大事件があったからか、どうかわからないが、富士通を退任してからの、この半年間は、妻に言わせると「現役のとき以上に忙しい」ことになった。従来以上に頻度が増えた講演依頼、社外団体の役員会、海外調査団への同行など、今のところ、体調に気をつかいながら何とか無事にこなしている。何ヶ月も前から企画した講演会に穴をあけてしまったら、主催者はどれほど困るだろうと考えると万が一にも欠席はできない。お陰様で、この半年間で月平均で4回、合計30回近い講演会を無事こなすことも何とか出来た。

講演会で、大勢の方々の前で、お話をするようになると、やはり好い加減なことは話せない。そのために、話す内容の何倍も勉強をする。そして、やはり、どこかで聞いてきた話は、迫力に欠け面白くない。実際に、この目で見てきた話はリアルで訴求力もある。だからこそ、迫力のある話をするために、実際の現場に行って見てみようと言うことになる。もともと、好奇心が強いほうなので、現場に見に行くことは大好きである。こうした取材のための出張で、またスケジールはさらに詰まって行く。

本社人事からは、「退任後、顧問という肩書きは1年間だけ残りますが、車もお部屋もなくなりますので、もはや出社には及びません」と言われたが、元々、現役時代から、外歩き専門で、殆ど出社していないので、退任してからも生活は現役時代と全く変わらない。むしろ、お客様と接している最前線の営業マンからは、これが最後の仕事とばかりに、現役時代以上に、どんどん仕事の依頼が来る。家内からは、もう少し仕事を減らしたらと言われるが「もうすぐ、声もかからなくなる。まだ、声がかかるうちが花、せめて、その間だけでも応えなくては」と言い訳をしている。

来年6月からは、いよいよ、本当に第二の人生が始まると思うと、なお一層ワクワクする。これまで、あちこち外に出歩いている分だけ、出会いの機会も多かった。特に、最近は、今まで以上に、多くの日本を代表するVIPとお会いしている。やはり、高い地位に登り詰められた方は、中途半端な人生を歩んではいない。そして、皆様、話が上手で、また面白い。だから多数の集団を束ねるリーダーで居られるのだろう。どうやら、今年2014年に引き続き、来年2015年も忘れられない1年になりそうだ。

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