228  1年ぶりの中国 (その3)

私たちは、マカオからフェリーで香港に入った。香港は前日の豪雨が嘘のように、快晴であった。現地駐在員から聞いた話では、前日の香港はTVの天気予報で黒い雲のマークが表示されたのだそうだ。このマークが表示されると、学校や会社は強制的に通学通勤が禁じられる。物凄い豪雨で、雷鳴が轟いていたそうだから、昨日は、フェリーで香港入りするなど、全く無理だったに違いない。やはり、私は、正真正銘の晴れ男である。

私が香港を訪れた目的は、香港中文大学ビジネススクールで講演を行うためである。経営学では世界的な評価を受けている牧野先生のお招きによるものであった。先生を慕って、日本の大企業から何人もの留学生が派遣されている。何で、日本人が香港へ留学するのかと疑念を持たれる方には、別表の2013年アジア大学ランキング上位20位までをご覧になれば、ご納得頂けるものと思う。なにしろベスト10の中に香港の大学が2校入っており、香港中文大学は、堂々の12位である。そして、香港勢は20位以内に4校も入っている。まさに香港はアジアを代表する学術都市である。

講演が終わった後で、牧野先生に構内を案内頂いたが、香港のダウンタウンからだいぶ離れた丘陵に点在するキャンパスは広大で、静かに勉強できる環境にあった。丘の上から眺める香港湾に点在する小島が松島のように見えるビュースポットは、まさに絶景である。確かに、世界の金融センターを間近に見ながら、こんな静寂な環境の中でビジネスの研究をするのはさぞかし効率が良いに違いない。

先日も、シリコンバレーに全米の大学が集まってきているという話を書いたが、イノベーションを創出する学術研究の場というのは、ダイバーシティーの高さが必須要件ではないかと思う。その意味で、東京は、日本の中では、唯一、ダイバーシティーが高い都市なのだろう。何しろ、今、私が居る新橋界隈も中国語の会話が頻繁に耳に飛び込んでくる。

その香港も、最近は先進国並みに経済成長率も年率で2-4%にソフトランディングしたものの、最近の不動産高騰はバブル以外の何物でもないと言う。そのため、香港駐在員が借りるアパートの家賃も、それに連れて高騰し、月40万円から50万円でも、決して新しく立派なアパートではないという。従って、会社が一度借り上げて社員に再リースをしている。さらに欧米同様、香港の不動産も中古物件でも新築価値から全く価格が下がらないのだと言う。いや、むしろ、今は、どんどん築年数が増せば増すほど、先行物件として立地条件が良いから、むしろ価格が上がって行く。

購入者は、もちろん大陸側の中国人である。大陸側では土地の所有権が認められていないため、所有権が認められている香港の不動産は一層魅力的なのだという。所有権と言う意味では、日本も土地の所有権を認めているので、香港で良い物件が見つからない場合、大陸の中国人富裕層は日本の不動産を購入する。特に、中国人が憧れる雪が降る北海道は価格も安く、絶好の投資物件である。ニセコを中心に中国の富裕層がどんどん土地を購入しているのは、決して日本の水源を狙っていると言うような大そうな目的ではない。あくまで個人資産の国外退避と見た方がよほど素直である。

このようにして中国の富裕層が資産を国外に退避させているのは、やはり中国国内に利潤を生む投資先が見つからないからだと思った方が良い。リーマンショック後の4兆元に端を発する、巨額の公共投資、国営企業の設備投資は、中国全土に莫大な過剰設備、過剰在庫を生んだ。5月23日東証での日経225平均、1000円を超す大暴落は、HSBCが同日発表した5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が49.6となり7カ月ぶりの低水準となったことが原因ではないと中国政府が反論しているが、それは全く正しい。中国の製造業が大変な苦境に陥っていることなど、ずっと以前から判っていたことで、今更、日本の株式に織り込む材料でも何でもない。それよりも、我々はむしろ日本自身の中に、株式暴落の理由を探し出した方が良い。 

2013年アジア大学ランキングTOP20

1位.University of Tokyo(東京大学):日本

2位.National University of Singapore(シンガポール国立大学):シンガポール

3位.The University of Hong Kong(香港大学):香港

4位.Peking University(北京大学):中国

5位.Pohang University of Science and Technology(浦項工科大学):韓国

6位.Tsinghua University(清華大学):中国

7位.Kyoto University(京都大学):日本

8位.Seoul National University(ソウル大学):韓国

9位.Hong Kong University of Science and Technology(香港科技大学):香港

10位.Korea Advanced Institute of Science and Technology(韓国科学技術院):韓国

11位.Nanyang Technological University(南洋理工大学):シンガポール

12位.Chinese University of Hong Kong(香港中文大学):香港

13位.Tokyo Institute of Technology(東京工業大学):日本

14位.National Taiwan University(国立台湾大学):台湾

15位.Hebrew University of Jerusalem(エルサレム・ヘブライ大学):イスラエル

16位.Tohoku University(東北大学):日本

17位.Osaka University(大阪大学):日本

18位.Tel Aviv University(テルアビブ大学):イスラエル

19位.City University of Hong Kong(香港城市大学):香港

20位.Yonsei University(延世大学):韓国

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