2020年9月 のアーカイブ

436 ポスト・コロナ時代に向けて(16)

2020年9月3日 木曜日

COVID-19禍では買い占めによるパニックが頻繁に起きた。マスク、トイレットペーパーなどに留まらず、食品の分野までに及んでいる。カップラーメンは未だしも卵、ホットケーキ粉やケチャップまでが棚から消えた。必須日用品の欠乏も深刻だが、食品が手に入らない危機ほど深刻なものはない。こうした状態が、一部の人々による一時的な買い占めによるものなら、少し辛抱すれば元に戻る。しかし、食料の殆どを外国からの輸入に頼っている日本で、全国の在庫が払拭したら、どうなるのか? 今回のCOVID-19を契機に真剣に考える必要が出てきている。

その一つは、世界各国で始まった自国優先主義である。今や世界は分断され、従来のエネルギーだけでなく、医療機器や食料までもが戦略物資となってきた。敵国を攻めるのに火器は要らない、兵糧攻めで十分だというわけである。そこで、食料の安全保障という観点からも、グローバリズムに依存した従来の農業政策、水産業政策を大幅に見直す必要が出てきている。つまり、重要な食品については、他国への依存度を減らし、もっと自給率を上げられないかという議論が必要となる。

加えて、もう一つ世界共通の危機として気候変動がある。ある地域は渇水による干ばつ、またある地域では豪雨による水害で農業は壊滅的な打撃を受ける。一方、水産業では気候変動による温暖化で海水面の温度上昇が起きて水産資源は壊滅的な打撃を受ける可能性がある。さらに、水産資源については、乱獲による枯渇だけでなく、マイクロプラスティックによる海洋汚染で食用に適さなくなるのではとの心配もある。

一方で、今回のCOVID-19禍で生じた食料問題がいくつかある。一つはアメリカで起きた豚肉加工場でのCOVID-19集団感染である。このため、アメリカでは豚肉の需給関係が逼迫した。もう一つは、COVID-19検疫によりメキシコ国境経由の入国者を大幅に制限したことにより、レタスやイチゴの採取者が居なくなったことである。これは、同じくCOVID-19検疫で東南アジアからの技能実習生が来なくなり採集に困っている日本も同じ状況に陥っている。

さらに、もっと深刻な問題が潜んでいる。それは、COVID-19も多分そうだろうと思われるが、これまで世界を席巻した主要なパンデミックであるインフルエンザ(鳥由来)、SARS(ハクビシン?)、MARS(ラクダ)、HIV(サル由来)は、全て動物を食する習慣によって動物から人間に感染したという事実である。狂牛病(BSE)はヒト・ヒト感染しないが広義の動物由来の感染症とも言えるだろう。近年、中国が、いくつかのパンデミックの震源地になっているのも、野生動物を好んで食する中国の文化から来ているものと思われる。当然、中国政府も、その点を気にしていて、今後、野生動物を食品市場に流通させないような恒久的な施策を講じつつある。

第一次世界大戦でも第二次世界大戦でも、戦場における圧倒的多数の戦死者は銃火器による殺戮ではなかった。死因の殆どは、飢餓と感染症である。政府は地震や津波、水害といった自然災害に強い強靱な社会を目指しているわけだが、併せてパンデミックや飢饉に対しても強靱な社会を構築することを求められている。さて、今回、COVID-19禍によってパンデミック対策については、現在、多くの議論がなされるようになったが、食料危機については、果たしてどこまで真剣な議論がなされているだろうか?

私は、昨年10月、サンフランシスコで開催されたDisrupt SF 2019に参加した。このDisruptは、現在シリコンバレーで最も使われている言葉で、つい先日まで日経新聞の1面でも、このDisrupt特集が組まれていた。Disruptとは、本来、「破壊」を意味する言葉だが日経新聞では「断絶」と翻訳されており、さすが日経新聞だと感心した。このフォーラムは3日間に渡って開催され、全米から400ものスタート・アップが参加している。日本のJETROが協賛していることもあって、日本からのスタート・アップも数社ほどブースを出展していた。

シリコンバレーのスタート・アップと言えばフィンテックとか仮想現実とか、華やかなテーマを想起させるが、このDisrupt SF 2019では「飢餓」をテーマとして扱っているスタート・アップが少なくない。彼らは、地球温暖化防止は極めて重要なテーマであるものの、現状では、もはや不可避の事態と考えられると言うのである。その結果、生じる危機は深刻な食料不足による「飢餓」で、それを救うための技術開発を今から開発する必要があると訴えている。AIやIoT技術による農業改革であるAgriTechや水産業改革であるAquaTechである。

AgriTechの目玉は、点滴灌漑で、少ない水量で効果的な灌漑を行おうとするものである。イスラエルで開発された点滴灌漑技術はスペインにおけるブドウ栽培など既に世界各地で実用化されているが、半導体チップを使った土壌センサーで点滴量や肥料成分の最適化など干ばつに強い農業を目指している。あるいは、先ほど紹介したレタスやイチゴなど従来人手でしか収穫できない作業のロボット化という課題に挑んでいるスタート・アップもいる。

水産業においては陸上養殖に関するテーマが多い。そういえば、アメリカ大陸の殆どの地域は海に面していないので陸上養殖がデフォルトになるのは、当たり前である。日本でも海水面温度の上昇と大型台風の影響で海上養殖は困難になりつつある。陸上養殖では水族館のように疑似海水を循環させて使うのだが、餌や糞による汚染を監視するとともに、生存率や生育状況を監視カメラで自動測定する技術が開発されている。

なかでも私が感銘を受けたのは、ノルウェーの国営ファンドが出資し、ノルウェー人がシリコンバレーに設立したスタート・アップが二酸化炭素から魚の餌をつくるという事業である。彼らは既にサンプルを製造済であり、本国ノルウェーの鮭の養殖場で試験運用している。二酸化炭素とアンモニアからバイオリアクターによってタンパク質を作り魚の餌に加工しているが、二酸化炭素は近くにあるセメント工場の排ガスから分離している。

本来空気中に放出される二酸化炭素の再利用であることだけでも地球温暖化防止のための取り組みとして素晴らしいのだが、なぜ彼らの目的が魚の餌なのだろうか? よく聞いてみると、彼らの考え方はさらに素晴らしい。ノルウェーは鮭の養殖では世界一である。これは水産資源の保護という意味では素晴らしい効果を上げているわけだが、その養殖の餌が、また魚だと言うわけだ。彼らの問題意識は、今後、枯渇していく資源を餌にした養殖事業に持続性はあるのか?という疑問である。

もう一つの飢餓問題への取り組みが、ヴィーガン(完全菜食主義者)である。ヴィーガンはベジタリアン(菜食主義者)と異なり、キチンとタンパク質を摂取する。一般的には大豆などの植物性タンパク質から食品加工によって擬似的な肉を模して食べるわけだが、今、シリコンバレーで多くのスタート・アップが挑戦しているのは、普通の肉と同じ味と噛み応えがある人造肉だ。彼らの主張は、牛や豚、鶏を飼育する牧場ではトウモロコシなどの穀物を餌にしているが、これは大量の水資源を非効率に消費しているだけでなく、例えば牛が反芻して出るゲップは二酸化炭素以上の温室効果ガスとなって大量に排出されるというわけである。

もちろん、彼らの主張の中には、動物を食するという文化をやめれば、地球温暖化の防止に役立つだけでなく、パンデミックを発生させる確率を著しく減らすことが出来るという論理がある。ポスト・コロナ時代に求められる技術開発とは、人類も動物も共存して生き残るという優しい思いやりが求められている。

435 ポスト・コロナ時代を迎えて (15)

2020年9月2日 水曜日

2019年の訪日外国人観光客数(インバウンド)は合計3188万人と初めて3000万人を超えた。内訳は中国が959万人(30%)、韓国 558万人(18%)、台湾 490万人(15%)、香港 230万人(7%)と東アジアだけで合計70%となる。さらに、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナムといったASEAN勢で349万人(11%)と東アジアとASEAN諸国を合わせると合計80%にまで及ぶ。この経済効果は4兆6000億円にも達する。これが2020年には、ほぼゼロになるのだからCOVID-19禍がインバウンド経済に及ぼす影響は計り知れない。

日本のインバウンド3188万人を世界的に見ると、1位のフランスが8940万人、2位のスペインが8277万人、3位のアメリカが7961万人と続き、日本は英国の3631万人に続いて、堂々11位にまで駆け上がっている。さて、日本はどうして、このように急速に世界に冠たる観光国家になったのだろうか? 世界が急に日本の魅了に注目したというのだろうか? しかし、よく見ると日本のインバウンドの大多数が東アジア、東南アジアからの観光客で占められている。

ところで日本人の可処分所得は1997年をピークに年々減少し、2019年にはピーク時より13%も減っている。一方、東アジア、東南アジアの人々の可処分所得は1997年と比較したら4-5倍にまで伸びている。ということは、彼らから見たら日本の物価が非常に安く見えるのだ。今まで手が出なかった憧れの日本が、急に身近に感じられて、よし行ってみようということになったのだろう。つまり、世界の中で、日本だけが可処分所得が落ちている。その結果、物価はどんどん下がり、デフレが進行し続けている。2013年以降、アベノミックスで株価は上がったが、賃金と物価は下がり続けている。

安部首相と共にアベノミックスを推進してきた日銀の黒田総裁は異次元の金融緩和によって年率2%のインフラを目指したが、殆ど効果無く日本のデフレは進行し続けている。経済評論家は、大変ご不満のようだが、国民は安堵して胸をなで下ろしている。なぜなら、給料が下がっているのに物価だけが上がったら暮らしはますます苦しくなる。万が一、黒田日銀総裁の思惑通りにインフレが進行すれば、大衆は怒り狂い日本中で暴動が起きるだろう。つまり、アベノミックスの金融政策は失敗したからこそ、国民は毎日何とか食いつないでいる。

今の日本では、こうした事実を冷静に認識している企業だけが、静かに順調に業績を伸ばしている。今回のCOVID-19禍で、多くの企業が苦しむ中で、以前からデフレを組み込んで好業績を上げている企業がにわかに注目を浴びている。その代表が、ワークマンとニトリである。消費者は日常性を大事にして清潔な普段着を求めている。晴れ着は、もはや着ていくところがない。老人から若者まで、皆、生活の全てにおいて「コスパ」を求めている。最近、発表された「GUコスメ」も、きっと成功するだろうと私は思っている。年率で30%近く落ち込む日本経済。人々の可処分所得の落ち込みは、多分、それ以上になるだろう。それでも人々は工夫をしながら強かに生きる。

しかし、街を歩くと、ドイツ製高級車のシェアが驚くほど増えたような気がする。極端に言えば、街中を走っている車はドイツ製高級車と軽自動車だけと言っても過言では無い。多分、この人たちはアベノミックスの恩恵を受けて、株の値上がりで大儲けしたのだろう。しかし、多くの人々は、家賃と水道光熱費、食事代を支払うだけで精一杯だ。こんな中で、Go To トラベル、Go To イートと言った政府主導のキャンペーンにどれだけの人が乗るだろうか。もはや、経済を活性化して企業業績を上げればトリクルダウンで人々の生活が豊かになるという循環経済の思想は、COVID-19禍では当てはまらない。

家電量販店では今夏エアコンが爆発的に売れた。それは、エアコンは贅沢品ではなく、生命維持装置となったからだ。少し前までは、マスクや消毒用アルコールも並んでも手に入らなかったし、今でも体温計、使い捨て手袋やウエットティッシュは簡単には手に入らない。人々は、お金は無くても生きるために最低限必要なものは買う。しかし、娯楽や教養にまでお金を使う余裕はもはやない。だから、音楽や舞台など芸術文化面での支援は政府が直接行わないと将来への命運は危うい。

そうだ。COVID-19禍は戦争なのだ。今、起きていることを、戦後すぐに生まれた自分の人生の記憶と重ねると、よく理解できる。しかし、あの時はドイツ製高級車を乗り回しているような経済的に豊かな人々の姿はなかったような気がする。皆が貧しければ、いくら貧しくても幸せである。やはり、人々を苦しめている最大の問題は格差の拡大に違いない。

 

 

434 ポスト・コロナ時代に向けて (14)

2020年9月2日 水曜日

今年の春、COVID-19禍が深刻になりだして以降、講演の依頼はさっぱりなくなった。昨年までは月に3回ほど日本全国各地から講演要請を頂いたが、その中で最も要望が大きかったテーマは「人手不足」である。確かに、日本は、少子高齢化が進む中で生産年齢人口が減り、深刻な人手不足が顕著になっていた。そこで、いつも私がお話させて頂いていた内容は、まずは日本とアメリカの労働生産性比較である。日本人の誰もが「勤勉な日本人はアメリカ人より、よく働くはずだ」と思いこんでいる。確かに日本人は真面目だし、労働時間も長い、だからアメリカ人より働いているという論理である。

しかし、いくら真面目に長時間働いたからといって、成果が出なければ働いたことにはならいし、利益を出さなければ賃金も増えない。日本の各業種別に調べてみると、アメリカに匹敵する労働生産性を発揮しているのは建築・土木だけである。確かに、一昔前の都心のビル建設現場には多くの外国人労働者が現場に張り付いていた。ところが、今はどうだろう。地下の基礎工事を終えて地上に姿を現したビルは、殆ど人影も見えないまま、毎日、すくすくと高さを伸ばしていく。きっと、想像を超える合理化と自動化が進展したのであろう。

そして、金融・製造分野での労働生産性は、アメリカのほぼ半分である。サービス業では、アメリカの3分の一、そしてIT分野の労働生産性は何とアメリカの5分の一にしか過ぎない。これは日本人がアメリカ人に比べて能力が劣っているとか、働いていないとかいうことでは決してない。要因は、いくつかあるが、一つは、やらなくても良い仕事をしているということだ。これは働き方改革で是正されるはずだが、無駄な管理階層を多く作って組織を複雑化させ、「人を管理する管理職」を作ってしまったことが大きな失敗である。

アメリカでも管理職(=マネージャー)は居るが、人を管理する業務ではなくてプロジェクトを管理するマネージャーである。だから、部下を持たないマネージャーが多数存在する。こうしたマネージャー達が協業して、決められたプロジェクトを納期通り、コスト管理された状態で実現していくために共同作業を行っていく。ところが日本ではどうだろう?例えば、課長が承認しても部長が決済しなければ事が進まない。各階層の管理職を説得するために何度も会議が開かれて無駄な時間が、どんどん過ぎていく。

もう一つは、ITの活用方法である。日本では「ヒト」では出来ないことをITにやらせる、逆に言えば「ヒト」で出来ることは「ヒト」にやらせればよいので、ITを導入する必要は無いという考え方が浸透している。一方、欧米では、とにかく離職率が高いので、「ヒト」に依存することは事業継続性から見て大きなリスクであるという考え方だ。従って、「ヒト」で行うより多少効率が悪くてもITで行う方が、リスクが軽減されると考える。こうした異なる考え方で長年進んでいけば、その両者には驚くほどの生産性の違いが表れてくる。IT分野のコンサルタント業界で、よく話題に上るのが、AIを使って問題解決の要請を受けて話を聞いてみると、実はAIなど全く使わないで、現行のIT技術で解決できる話が70%以上だというのである。

それで、深刻な人手不足に悩んでおられる経営者の方々に、私が、いつもお話させて頂くのは「皆様が、もっとAIやIoTを含むIT技術を各分野に導入されたら、今の人手不足は一転して余剰人材を抱えることになります。その時、長年尽くしてくれた仲間を解雇するのですか? そうならないように、新たな仕事のやり方に対応できるよう、今から人材教育することが経営者の責任です」と申し上げている。もちろん、今の仕事のやり方で、それが全てAIやIoTで合理化できるとは思われない。今の仕事のやり方、そのものが本当に正しいのか、そのビジネス・プロセスを抜本的に改革する必要がある。もっと、有り体に言えば、世界中で多くの企業が導入済みのパッケージに合わせて、今の仕事のやり方を変えていくという考え方もある。

但し、これには社内の反対も多いに違いない。透明性が高く、効率的なビジネス・プロセスを導入すれば、必要が無くなる立場の人やポジションが沢山出てくるからだ。こうしたビジネス革命が、今回のCOVID-19禍で起きようとしている。狭い会議室に皆で集まって何度も長時間会議をするようなことは、暫くは許されない。オンライン会議は従来の仕事のやり方を大きく変えるだろう。実際のリアルな会議に比べて、オンライン会議は上下関係の意識が希薄となる。皆が対等に参加している感じはきっと議論の活性化をもたらすだろう。そこではバーチャルであるがゆえにフラットな組織を感じさせる。いや、そうでなければ、むしろオンライン会議などやらない方が良い。

もう一つ人手不足から労働力余剰になる要因が、COVID-19禍が生み出すかも知れない大量の失業者である。このCOVID-19禍で、倒産や事業規模縮小に追い込まれるのは中小企業だけではない。就職戦線で皆が憧れていた一流大企業も、こうした悲劇に巻き込まれる可能性は高い。近年、転職市場が活況を呈しているので、ここに経験豊かで優秀な人材がドッと流れ込むだろう。逆に、優秀な人材の採用に悩んでいた新興企業には絶好のチャンスである。企業の新陳代謝が活性化することは、日本の経済成長を促進させることにもなるに違いない。

COVID-19禍による、労働市場へのさらなるインパクトとして、外国人労働者の問題がある。検疫による規制によって日本に入国できない膨大な数の外国人労働者が発生している。これまで移民を積極的には受け入れてこなかった日本も未曾有の人手不足から外国人労働者の積極的な受け入れに舵を切ったわけだが、国内に大量の失業者が出てきた場合に、これまでどおり外国人労働者を積極的に受け入れるべきかどうかについては難しい議論が出てきそうだ。一方で、外国人労働者側も、日本での待遇問題が中国やドイツに比べて必ずしも良くないことで不満を持ってきたことも相まって、一気に、「もう日本へ行くのはやめよう」という機運になるかも知れない。ここは、ぜひ、日本の長期的な持続性を含めて、よく考えるべきだろう。

この度のCOVID-19禍で、労働市場における、さらなる問題が浮かび上がってきた。テレワークやオンライン会議は、これまでのビジネス・プロセスを大きく変革し、AIやIoTという次世代のITテクノロジーの導入を容易にする基盤形成を促進する。この結果、少なくとも定型業務を行っているホワイトカラーの職は大幅に減少する。一方で、例えば看護、介護、保育といった、テレワークでは出来ないエッセンシャルワークの重要性は益々高まり、これまで外国人労働者で充当しようとしていた考え方に変化が起きる可能性も出てくる。

労働市場統計は求人倍率、失業率で示されるが、実際には職の中身でミスマッチが起きる可能性は高い。特に、農業や水産業など食に関わるエッセンシャルワーカーの賃金水準については、国民全体で、よく考えた方が良い。技能実習生という、日本が世界から非難されている外国人の低賃金労働制度で凌げる時間は、もうそう長くはない。そして、分断された世界、気候変動などを考慮すれば、食の安全保障という課題は、もはや遠い未来の話ではないからだ。