中国は、今や紛れもなく、堂々たる世界第2位の経済大国で、早晩、アメリカに追いつく日も見えて来た。もはや、中国と日本の国力を比較すること自体に意味がなくなっている。確かに、中国は日本にとって国防上の脅威かも知れないが、それ以上に日本経済にとって最も重要な国でもある。つまり、日本経済の持続性は中国の経済動向に大きく関わっていると言っても過言ではない。その中国経済が大きな転換期を迎えているような気がするのは私だけだろうか?
トランプ大統領は、全てが破茶滅茶で、およそロジックが破綻しているように見えるが、彼は大局的なセンスだけは抜群だと私には思われる。つまり、アメリカにとって大きな脅威は、もはやロシアではなくて中国だという認識である。ロシアは軍事的には強国かも知れないが、経済的には準破綻国家である。もはや腐敗し切った政権がロシア経済の再生に貢献できるとは全く思われない。これまでの世界の歴史の中で、政治が腐敗した国家で繁栄している国は存在しなかったからだ。モチベーションを失った国民が国家の再生に貢献することはあり得ない。
このトランプ大統領の中国敵視政策は、今後、益々、勢いを増して行くだろうし、トランプ失墜後の次期政権にも引き継がれるに違いない。日本はアメリカの属国だと非難するナショナリストは、アメリカの真の強大さが分かっていない。日本は永遠にアメリカと対等な地位に立てることはない。アメリカは、ドルという世界で唯一の国際通貨を持つが故に、世界経済における一切の決済権限を持っている。北朝鮮の金正恩がトランプ大統領に跪いたのも、全てアメリカの金融制裁の力である。そして、それは飛ぶ鳥を落とす勢いの中国にとっても例外ではない。
当初、ドルに代わる国際決済通貨を目指していた人民元は、今や見る影もない。人民元の自由化政策は、中国からアメリカへの巨額の資本逃避を招いたからだ。つまり、中国人自身が中国の政府を全く信用していない。中国人の若者の一番の夢は「中国から出て行くこと」だということからも容易に想像できる。仮想通貨を禁止するなど、人民元の管理を強化した結果が、大幅な人民元安を招くことになった。通貨安は一時的に輸出力を増すかも知れないが、究極的には国力を大きく削ぐことになる。
リーマンショック後の優等生と言われた中国は、莫大な額の景気刺激策で歪な経済発展をしてしまった。企業や個人の負債総額は、日本のバブル時の深刻さを遥かに超えている。三期目を確実にした習近平政権は、空虚な目標を取り下げて、実態経済の引き締めに動いているが、それは、所詮、大きな痛みを伴う改革でもある。そうした中で、世界最大数の大学卒業生に対して相応しい職は限られてきた。だから、日本に働きに来る中国人が激増しているのも理解できる。一方、世界でも最も若く50歳代でリタイアする人たちの年金の蓄積も未だ全く十分ではない。
そんなに、お先真っ暗とも見える中国でも、これまでも、今後とも、日本の重要な顧客であることには間違いない。ここ数年、中国に支えられて来た日本企業の数は星の数ほどある。しかし、中国企業への設備投資に貢献してきた日本企業の減益予想、株価下落が毎日報道されている。少なくとも、今後は、中国依存度が極端に大きい企業は間違いなくリスク銘柄になる。ならば、日本は、中国以外に、どの国にポートフォリオを拡大すべきか?それが大きな問題である。今や、BRICSは、それぞれ、全く、これまでの勢いがないからだ。中国以外のそれぞれの国は腐敗政治が国をダメにしているからだという。
日本は、アメリカを除く、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパなどの先進国、そして成長著しい、ベトナムを含むASEAN諸国と共に、次の世界経済の枠組みを真剣に議論しなければならない時代になって来た。アメリカと中国という二つの超大国を脇に置いて、その他の国々が密接に連携するという不思議な時代が、もう、すぐ近くにやって来ている。まさに、これまでの常識が通用しない時代の到来である。若い人が、真っ白から新しい考えで動かないと日本の未来はない。いつまでも、オジサンたちが、日本の政治や経済の中枢に居座っていてはいけないのだ。