今日のTVニュースにて、韓国フェリー事故で遭難した高校生が撮ったビデオを視て、胸が締め付けられるほど心が痛んだのは私だけではないだろう。これから夢多き将来がある高校生が400人近くも無駄に命を奪われたことは何とも許しがたい。先々週、米国出張中に多くの米国TVニュース番組が、この事故にかなりの時間を割いていることに驚いた。世界中が、この韓国発のニュースに大きな衝撃を受けたに違いない。韓国では、既に首相が責任を取って辞任し、朴大統領にまで責任追及が及び始めている。しかし、私には、この事件の根本原因は首相や大統領にあるとは思えない。つまり、その本質を考えるときに韓国社会が既に崩壊しつつあるとしか思えないのである。
先々週、シリコンバレーを訪問した時に、多くの人が言っていたことは「シリコンバレーは、もはやコリアンタウンとなった」と言うことだった。確かに、サムソンがシリコンバレーに巨大は開発拠点を築いたことにも関係するだろうが、サムソンの研究員だけで、これほど多くの韓国人がシリコンバレーに流入するとは思えない。自分の力に自信を持つ資質や能力の高い韓国人がアメリカでの夢の実現に賭けて、もはや壊れつつある祖国を捨ててアメリカに脱出してきたとしか私には思えないのである。
韓国は世界で一番大学進学率の高い国である。80%を超える若者が大学への進学を果たし立派な成績で卒業するが、そうした努力に相応しい職を得るのは相当に難しいようである。これまで、韓国は、いつも日本を目指して国民全体が頑張ってきた。その結果、とうとう、日本が抱える課題までも全て追い抜いてしまったのだ。自殺率、離婚率、自己破産率、そして少子化率までも日本を追い越してしまった。このように努力しても報われない社会では必ずモラルハザードが起きる。そうした文化は国中に広く蔓延しているので、決して、あのフェリーの船長だけを追及すれば済むと言う簡単な問題ではないだろう。
現実主義者で親日派だった李明博大統領が、突然、政権末期に反日主義者になったことに驚いた方も多いと思うが、深刻な国内問題に悩んだ大統領が退任後、その責任の追及から免れるためのカードは強力な反日政策しかないと思ったのかも知れない。強硬な外交姿勢と取る政権は常に深刻な国内問題を抱えていて外交カードを国内問題のはけ口として利用する。今の中国の政権も全く同じスタンスだと思った方が良い。
韓国はサムソン、現代、LGといった財閥グループがGDPの過半を占めている異常なほどの寡占社会である。しかも、この3大財閥がグローバルに活躍する資金の殆どを国内市場から調達している。そして、世界一のシェアを誇るサムソンの携帯電話事業の製造拠点は韓国からベトナムへ移転した。そのお蔭でベトナムは世界最大の携帯電話製造国となった。つまり、多くの韓国国民はサムソンの繁栄の恩恵を全く受けていない。このたび、サムソンが製造をベトナムに移転したと同様、研究開発も米国に移したとすれば韓国社会はますます空洞化し疲弊することになるだろう。
さて、この韓国が抱える問題を、私達日本は対岸の火事として静観している余裕があるのだろうか? 一見、20年以上も低迷化していた経済が活況を呈して、長く続いたデノミから脱却したように見える好調な日本経済。その謎は、東北の被災地を訪れたら直ぐにわかる。これだけ莫大な公共事業費が使われていたら、日本国内の景気循環が良くならないほうがおかしいと言わざるを得ない。そのかわり、私たちは莫大な借金を将来世代に引き継がせている。
今の、韓国では、中国と同様に深刻な貧富の格差が生じている。これこそがモラルハザードを起す大きな要因となっている。日本では、未だ、それほど深刻な貧富の格差が起きているとは思わないが、もっと大きな格差は、世代間格差である。私たちの世代の繁栄は将来世代から収奪しているものだと言うことをもっと深刻に受け止めるべきである。だからこそ、今の多くの若者が将来に夢を描くことが出来ないでいる。これは、将来、必ずモラルハザードを引き起こす。今後、有能な日本の若者は韓国の若者と同じように祖国を捨ててアメリカに向かうだろう。
今回の韓国のフェリー遭難事故は、我々日本にとって、決して他人事ではない。