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485 迷走する台風と新幹線

2024年9月7日 土曜日

8月29日から9月2日まで4日間の長期に渡り、東海道新幹線が運転中止した。私の記憶では、これほど長く、日本の基幹経路である東京―新大阪間がストップしたことは記憶にない。この東京―新大阪間の新幹線長期運休に対する海外からの旅行者の困惑は想像に絶するものがあるが、今回、国内のビジネス客からは大きな非難は見受けられなかった。中には北陸新幹線で代替し凌いだ方も少なからず居たようだが、多くの方々はリモートで打ち合わせを代替するなど、コロナ禍で培われた日本人ビジネスマンのITリテラシーが代替手段として役に立ったのだろう。

それにしても、今回の台風10号は前代未聞の動きをして日本社会を翻弄した。東西の高気圧に挟まれて、本来台風を動かすはずの偏西風は遥か北にあり、九州に停滞中の台風10号に対しては何の動きを与えることが出来なかった。その一方で、巨大なスケールを持つ台風10号の周辺雲が台風中心あった九州から1,000キロ以上も離れた東海地方を襲い線状降雨帯を形成し、東海道新幹線を運行中止に追い込んだ。今回の台風災害で、各TV放送局も、台風の現状報告はしてくれるのだが、台風が今後どのように動いていくのかについては詳しくは何も語ってくれなかった。どうも、台風に関する報道に関しては、気象庁の許しが得られなければ各TV局とも勝手に動向を推論することが許されないようである。

そこで役に立ったのが、欧州や米国の気象機関が発表する台風の動向予測である。日本と異なり欧米では10日後の台風の動向予測までTV放送することが認められている。今回、私には、それが非常に参考になった。例えば、アメリカ気象機関の予測シミュレーションでは、台風10号は九州を出た後、瀬戸内海に入ってから一旦九州寄りに戻っているのである。私はこのTV報道を見て、「今回の台風は、こんな風に迷走するのだ」とよく理解できた。もちろん、日本も含めて欧州も米国も10日間もの長期間の予測シミュレーションは結果的に予測が外れることも当たり前だ。台風の進路予測は、沢山の変動要素をベースにシミュレーションを行なっているので正確に予測することは難しい。

そうした前提条件を付しても、長期間の進路予測を報道する事には意味があると私は思う。時事刻々状況が変化するのであれば、そうした変化を反映した新たな予測を次々と公表すれば良い。そのように変動要素を含んだ予測でも、ビジネスや旅行で移動する方々には大変役に立つはずである。日本の台風情報は進路と進行距離を示しているが、これと合わせて欧米と同じように10日後くらいまでの進行シミュレーション情報を示して欲しい。もちろん、毎日台風の周辺状況は変化するので、その都度に新たなシミュレーション情報に更新するべきだろう。その結果が前日の予測シミュレーションと大きく異なる結果になっても全く構わない。台風の進行状況は、微妙な周辺環境によってかなり大きく変化するからだ。

今回の台風10号に関して、JR東海は、4日間の運休を行うなど、これまでにない慎重な運行体制を敷いた。その安全優先というポリシーは多くの利用客から支持されたようにも見える。今後、リニア新幹線が東京―名古屋間で運行を始めれば、今回のような静岡地区の豪雨による東海道新幹線の運休には大きな代替手段となる。しかし、殆どの路線が地下に埋設されるリニア新幹線は台風による耐性は極めて強いものの、地震に対する耐性は一体どうなのだろうかと思う。地震は台風と異なり、予測がつかず突然やってくる。事前に運休という体制も運用できない。リニア新幹線の地震に対する被害は、一体、どういうレベルなのだろうか? 私も、乗る前に、ぜひ、知っておきたいと思う。

 

 

484   日本の株式市場、突然の動乱

2024年8月14日 水曜日

今年7月11日、日経平均株価は史上最高値の4万2,224円をつけた。この値は、岸田内閣によるNISAなど政府の個人投資支援措置によることも多少は関係しているのかもしれないが、基本的には世界の投資家に向けて日本企業の評価が少しずつ高まった成果だと私は確信していた。もちろん、この値上がりの要因の一つとして、日銀の金融緩和政策によるマイナス金利を利用した投機的な円キャリー取引が後押しした結果も含まれているだろうということは私も承知している。しかし、この史上最高値まで至る日々の更新過程は着実で手堅いプロセスだった。

しかし、7月31日の日銀の利上げ発表を受けて、8月2日金曜日には突然2,216円値下がりして3万5,909円にまで暴落した。こんなこともあるのだ!と思っていたら、週明けの8月5日、月曜日にはさらに4,451円安の3万1,458円まで暴落した。その翌日、3,217円高と久しぶりの大幅高で戻したが、それでも3万4,675円と、暫く4万円には届かない感じである。その後の上げ下げは、いつも通りで何だか妙なところで落ち着いた感じになった。私自身は、12年前に退職してから株の取引は一才していないので、今回の暴落も個人的な損得とは関係ないが、NISAを機に株式投資を始めた若い人たちには、とんだ冷や水となったに違いない。

2012年以降、複数の企業の社外取締役に就任し、非公開情報を得られる立場になったことも、株の取引をやめた理由の一つである。その年に、私が社外取締役になった時、NHKから午後9時のニュース番組で「社外取締役特集」に出演することを申し込まれて、それに応じたことがあった。その年から、多くの日本企業が社外取締役の導入を始め、それ以降、日本企業の経営方針が大きく変わっていく。従来の日本企業は、業績不振に関わる不都合なことは出来るだけ公表を控えてきた傾向があった。しかし、一定数以上の社外取締役の存在は、従来から利益を損なってきた事業から、むしろ積極的に撤退し、株主を納得させられる事業に集中するという経営方針に変えていった。この結果、多くの日本企業が不採算事業からの撤退し、より優良事業に集中することで業績を伸ばしていくことになる。

多くの経営者にとって、株価は、世の中から評価された、いわば自身の成績であると考えている。こうして、10年以上もの間、毎年少しずつ改善をし、史上最高レベルまで持ち上げていった大切な株価を短期的な投機サイトの振る舞いで大きく乱高下させられるのは、見ているだけでも堪らないことだ。この株価の乱高下の要因として、今回の日銀の植田総裁の利上げ発表のせいにする方も居るが、それは大きな間違いである。元来、1ドル162円という歴史的な円安にまで円の減価を許した、これまでの日銀の異常とも思える金融緩和政策にある。つまり、マイナス金利、巨額の国債購入、大量の株式購入という愚策を長く継続し過ぎたせいであろう。短期的な投機サイトは、必ず常識外の不条理な所業を突いてくる。

ただ、ここで私たちがよく解らないのは、日本企業の株価が上昇してきた理由のどこまでが経営者の努力の結果であり、一方、短期的な投機サイトの円安キャリー取引による実力以上の値上がりの結果なのかが、もう暫くしないと判明しないことだろうか。そして、私が気にしているのは、日本の株式市場の動向はアメリカの株式市場の動向と全く無縁ではないことだ。今、直近のアメリカの株式市場を見てみると、必ずしも長期上昇していく途上にいるとは思えない。アメリカの株式市場はマグニフィセント・セブンと呼ばれる、Apple, Amazon, Alphabet, Microsoft, Meta, NVIDEA, TESRAなど一部のデジタル企業だけが上昇して、他の企業は殆ど上昇していないと言われている。

さらに「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、既に所有していたApple株の大半を売却して、今は次の投資に向けて現金のまま保有していると言われている。おそらく、もう少し、アメリカの株式市場が落ち着いてから再評価して投資を始めようとしているのかも知れない。今年、93歳になったバフェット氏は、「今は慌てる時ではない。もう少し長期的な視点で投資を見直す時期だ」と言っている。マグニフィセント・セブンが幾ら利益を得ても、その恩恵を受ける従業員は数が限られているので、アメリカ経済の主流である消費者経済への貢献も限定的である。やはり、アメリカ経済が発展するためにはトランプ氏が言うように多くの中間層を雇用する製造業を、さらに発展させるしかない。

しかし、アメリカの製造業は、むしろ、どんどん衰退しているようにも見える。私が、一番気になる企業はボーイングだ。今や世界中の航空会社は、次々と問題を起こしているアメリカのボーイングではなくて欧州のエアバスから購入しようと考えているのではないか。そして、ボーイングは航空機事業だけでなく、宇宙システムでも大きな懸念を持たれている。ボーイングが宇宙ステーションに送った宇宙飛行士がもはや地球に帰還できないのだ。今後、ボーイングはマスク氏が起業した「スペース・X」にもはや勝てないかも知れない。航空機や宇宙システムは、アメリカが他国の追随を許さず、絶対的王者を誇ってきた企業である。

かつて半導体製造企業として絶対的王者だったインテルも、今や巨額の赤字を出す企業となった。これまでAMDはインテルの王国だった86プロセッサでインテルを追いかけていたが、インテルの絶対的優位を持つ製造能力を凌駕することは出来なかった。そのAMDが、自ら半導体製造することを諦めて台湾のTSMCに製造委託するようになってから、インテルよりも高い能力を持った高性能プロセッサを販売できるようになった。そして、今を時めくAIプロセッサを独占的に販売するNVIDEAも韓国のSKが開発した高速メモリと台湾のTSMCによって製造されるAIプロセッサを組み合わせて、この分野では圧倒的な優位を誇り世界一の時価総額を有する企業にまでなったが、このNVIDEAですら純粋なアメリカ製造業とは言えない。

一方で、現在、日経平均を牽引する主要な日本企業は極めてニッチな分野で大きな世界シェアを有する戦略をとっている。これは戦後、大量生産分野で日本に価格、品質で遅れを取ったドイツが日本を凌駕するために取った対抗戦略である。しかし、世界の主要な製造業でダントツの一位となった日本が、その後、大量生産、高品質が要求される各分野で韓国や中国に抜かれて困窮する事態になった後、日本の製造業が選択した戦略はドイツが先鞭をつけたグローバル・ニッチ戦略だった。今や、半導体の製造や検査、組み立て装置という極めてニッチな分野で日本企業は圧倒的な強さを誇っている。

現在、東証株式市場で活躍している企業は、それぞれ大きな変革を行なっている。現在、一番利益が出ている商品は、決して昔から長く製造し続けているものではない。そして、多くの企業が、一般の人が、その会社名からは想像できない特殊な分野の製品の開発に注力している。今や、多くの日本の優良企業は、経営者も社員も、事業内容を大きく「変化する」ことを必須の目標として掲げている。このため、誰もが知っている一流企業の新社長が、もはや生え抜きから上り詰めた社員のゴールではなくなっている。大きく会社を変えるには、会社という枠組みを超えて多くの経験をされた方々の参画が必要だからだ。その結果、既に、外国人社長の就任も珍しくなくなった。

先月、40年ぶりに日経平均が4万円を超えたというのは、10年以上にも及ぶ、マイナス金利、円安といった日銀による異次元の金融緩和政策がもたらしたものでは決してない。だから、この異次元の金融緩和政策が次の段階に変化しても、日本企業の株価をさらに高い地位に上げることは、この10年間、各企業が地道に行なってきた企業文化の改革を続けることでさらに確かなものにできるはずだ。私がアメリカに着任した1998年は、1ドル144円という、とんでもない円安で、母親から借りたお金も車を買うだけで全てなくなってしまった。それにつけても、昨今の円安は160円をいうトンデモない円安だった。これほどの円安でなければ事業が成り立たないという企業は、どんどん潰れて市場から退場すれば良い。

物価も賃金も安く見せる過度な円安は、日本国民を奴隷化するための施作である。海外からの観光客は増えて日本全体にインバウンド景気を巻き起こすかも知れないが、日本の介護分野への就職を目指しているアジア各国からの人材は、円安による給与の低下で、もはや日本へ来ることを断念しつつある。日本企業の底力は、こうした過度の円安でなければ成り立たないほど弱いものではないはずだ。私は、今後の日本の株式市場の動向が実態ベースでの議論にいち早く立脚するように願ってやまない。

483   アメリカの最新事情

2024年7月5日 金曜日

今秋に行われるアメリカ大統領選挙、6月27日の公開討論会の後、バイデン大統領は大手メディアから撤退を促されている。今年77歳になる私が、殊更、年齢の問題を取り上げる資格もないが、私よりも更に高齢なトランプとバイデンの二人がアメリカの大統領選挙に出馬し、当選して、これから4年間世界で最も激務と言われているアメリカの大統領職に就くことを考えると、とてつもなく憂鬱になる。日本だけでなく、アメリカでさえも次の世代を担う政治家が、どこにも居ないのだろうか?と不思議に思う。それほどにも、誰もアメリカの大統領に就くことに対して大きな魅力を感じなくなってしまったというのだろうか?

一昨日、シリコンバレー在住の友人と久しぶりにランチを共にした。1998年にアメリカに赴任し、2000年に帰国し、2019年まで、毎年シリコンバレーを訪問して、その動向を見てきた私が、コロナ禍以降は行けなくなった。だからなのだろう、せっかく会えた久しぶりのランチで、大事な友人を次々と質問攻めにしてしまった。まず、最初に聞いたのは、サンフランシスコのダウンタウン事情である。今から四半世紀前には、私が住んでいたクパチーノからサンフランシスコ市は車で1時間ほど離れていたが、飛ぶ鳥の勢いにも負けないシリコンバレーの中心地であるサンノゼ地区から見たら、心休まる古き良き街だった。日本で留守を守っていた家族とサンフランシスコの街を巡り良き時間を過ごすことも出来た。

サンフランシスコは、真夏でさえも20度近くと涼しく、真冬でも15度近くで暖かいので真夏と真冬で殆ど同じ服装でも大丈夫な暮らしやすく大変素敵な街だった。そうしたサンフランシスコが大きく変わったのが、2005年ごろから、AirbnbやUberなど新たなシェアリングビジネスが勃興した時からだった。いつの間にか、サンフランシスコがシリコンバレーで最も新しいビジネス街として若い人たちが集まり活況を呈してきた。そして、Salesforceがサンフランシスコの中心部に高さ326m、地上 61階の本社ビルを建ててから、シリコンバレーの新たなイノベーションはサンフランシスコから始まると言われるほど若くてやる気のある人々がどんどん集まってきた。

特に最近、サンフランシスコで一番注目を浴びている企業は、ChatGPTで大きな注目を浴びているOpen AI社である。Open AI社は、サンフランシスコ市の南部にUber社のビル2棟を借り受け、従来比3.5倍の広さ(4.5万平米)に拡張している。こうした勢いのある新興企業で働く人々の給与は高く、その結果、サンフランシスコ市内の家賃は高騰し、これまでの住民が高い家賃を払えず退去を余儀なくされている。それだけではなく、現在、サンフランシスコ市内には多くのホームレスが集まっている。一説には、移民の大量流入に困った南部の州がサンフランシスコ行きの片道飛行機チケットを渡して追い出しているのだという。確かに真夏も真冬でも戸外で暑さ寒さに困らないで暮らせる気候もホームレスの増加に関係しているのかも知れない。

そして、サンフランシスコ市の窮状はそれだけではない。2014年に制定された州法で、$950以下の窃盗、万引きの初犯以外は無罪放免となることが定められた。つまり、貧困のために少額の品物を窃盗あるいは万引きしたりしても罪に問わないという法律を逆手にとって、白昼堂々と店から品物を盗んで行く連中が後を立たない。一方、店側の店員も、こうした犯罪を目撃しても暴力を振るわれるのを恐れて見て見ぬふりをする。こうした事が毎日多発すると店を運営する事自体が困難となり、サンフランシスコのダウンタウンから多くの店が閉店し、撤退していった。この結果、サンフランシスコ市のダウンタウンは日中、ホームレスばかりのゴーストタウンとなった。

このゴーストタウン化は、コロナ禍でリモートワークとなり街中から通勤する人々の往来が一時消えたことも一つの原因となった。そして、Open AIのような新興企業は、今や、リモートワークを一切認めなく毎日出勤する義務を課しているわけだが、従業員は通勤している車を駐車場で車上荒らしに遭い大変な被害を被っている。そうした状況の中で、サンフランシスコで一家を構えて子育てをしていた、私の友人の娘さんたちは、最近、ご主人も含めて一家でヒューストンに引っ越していった。二人のお嬢さんのうち一人は建築家で、もう一人はバイオ研究者である。友人が住んでいるサンノゼも、まだサンフランシスコ市ほど治安が悪くなってはいないが、少しずつ犯罪が増えつつあるという。それを危惧した友人は、将来、娘さんたちと一緒に暮らすことを考えて最近ヒューストンに家を購入した。

Open AIのようにリモート勤務を認めない企業はアメリカでは少数派ではあるが決して少なくはない。しかし、これまでサンフランシスコで働いていた多くの研究開発者はテキサス州のオースチンやヒューストンへ移住している。その理由としては、最近の治安の悪さもあるが、もっと大きな理由は住宅取得費用の高騰にある。日本と同じく、アメリカでも多くの労働者は住宅ローンを借りて住居を購入する。この金利が大幅に高くなったことも、地価の高いカルフォルニア州からテキサス州へ移動する大きな理由となっているのだろう。IT関連企業や半導体関連企業を目指す人々はオースティンへ、宇宙産業やバイオテクノロジーを目指す人々はヒューストンへ移住している傾向にある。

日米金利差の影響か?円安は一向に止まらない。シリコンバレーに住む友人は、「最近、シリコンバレーの賃金水準を聞くと、日本の賃金は安すぎるのではないか?」と言う。実際、サンフランシスコ市と近隣のサンマテオ郡において4人家族の年間所得が11万7400ドル以下だと「低所得に属す」と言われて、年間所得が7万3300ドル(1ドル160円では、1,173万円)以下だと「非常に低い所得層」に分類され公的支援対象になると言う。一方で、3億2600万人の人口を有するアメリカ全体では4,000万人の人々が年収2万5100ドル以下の貧困層だと言うことと比較すると、アメリカの所得格差、特にサンフランシスコ市の所得が米国の中でも突出して高い事がわかる。だからアメリカ南部の知事たちが浮浪者にサンフランシスコ行きの飛行機の片道切符を渡すのだろう。

こんなに高い賃金を支払うシリコンバレーで、Open AIやNVIDIAはどんどん新規雇用を増やしている。富士通でプロセッサ開発を行なっていたエンジニア達も最近、何人かNVIDIAに入社したらしい。彼らは、時価総額で世界一を目指すNVIDIAの給与は驚くほど高いが、勤務内容も給与に応じて厳しく「長く勤めるには大変だ」と言っているらしい。まさに、世界中から腕に自信のある天才や秀才と呼ばれているエンジニア達が夢を追いかけてサンフランシスコに集まってくる。彼らには、サンフランシスコ市が「少々、治安が悪い」くらいのことは殆ど気にならないのかも知れない。彼らは、まさに銃を持って戦地で戦っているような昂った気持ちなのだろう。

それでも、アメリカ全体の景気は良くなっているというが、本当にそうなのだろうか?日本でいうプライム市場に相当するアメリカのS&P500株式市場では、全体の10%の会社が市場全体の70%の時価総額を占有しているらしい。つまり、「マグニフィセント7」と呼ばれるApple, Amazon, Alphabet, Meta, Tesla, Microsoft, NVIDIAという7社の株は大きく上昇しているが、この7社を除くS&P500の中で493社の株は、殆ど上がっていない。「やはり、そうだろうな」と思うのだが、問題は、この7社の従業員数がアメリカ全体の労働者数に比べて著しく少ない。アメリカの中でも極めて高い給与が、ほんの少数の従業員で占められている。こうしたアメリカの所得格差が、アメリカ国民の政治参加に対する意欲を失わせているのかも知れない。

今日、英国の総選挙で14年ぶりに保守党が大敗して労働党政権に変わった。逆に、今まさに、フランスでは極右勢力が政権を奪取しようとしている。日本も含めて世界は大きく変わりつつある。こうした政治情勢の中で、世界の経済はどう変わっていくのか?そして、AI(人工知能)は、各国の企業活動にどのように関わっていくのか?いろいろ考えてみたい。