118 放射線による、がん治療

 

今夜は人間ドック入院初日の晩である。明日に一部の検査が残っているが、主要な検査は今日殆ど終了した。昨年から指摘を受けている心臓の冠動脈一部石灰化を除けば、他は全く問題がないようだ。4年前に、このドックで前立腺がんが見つかって、今、冠動脈の問題を指摘されているので、まことに畏れ多いことであるが、天皇陛下の後追いをしているようでもある。私にとって、陛下の存在は、まさに健康に生きるための素晴らしい目標となっている。

さて、その前立腺がんは、今日もPSAが0.1と、ほぼ心配ない状態までに落ち着いたが、4年前のPSAは4.2で、正常と異常のギリギリであり、 触診でも、超音波でも、CTもMRIでも外観上では全く異常は見つからなかった。それでも、医師である弟が、「大物政治家や、著名な経済人は、その値でもキチンと治療をしている。いずれPSAがもっと高くなるとがん細胞は確実に見つかる。」と言うので私も躊躇なく治療開始を決断した。

かつて、私が尊敬するインテルのアンディグローブCEOが前立腺がんになった時、彼は、未だ始まったばかりのインターネットを使って最善の治療法を見つけたと言う。それを参考にして、インターネットは勿論、医学専門書や複数の専門医の意見を参考にして私が決めたのが放射線治療だった。この時、放射線に関しても随分勉強したつもりであるが、これは自分に対処するための知見であり、福島県で被災された方々に放射線の助言や指導を行うなどは、もってのほかだと思っている。しかし、それにつけても毎日、メディアが報じている放射線の知識は余りに一方的である。

結論から言えば、私は放射線治療が最善のがん治療法だと思っている。アメリカではがん治療の7割に放射線治療を用いているのに対して日本は3割に留まっている。私の主治医は「残念なことに日本人は放射線を殺人光線だと思っていますからね」と言う。何が残念かと言えば、そのために助かる命が無為に失われているからだ。私の放射線治療は小線源と言う放射線を帯びた金属の針を患部に永久挿入する内部被曝手法と複数の角度から患部に放射線を浴びせる外部被曝手法の両方を用いたが、この外部被曝の総量は5,000ミリシーベルトにも及んだと、つい最近、知って驚いた。しかし、これでも日本は少ない方で、アメリカでは10,000~15,000ミリシーベルト浴びせて完治させることを狙っている。

そもそも何で放射線が、がん治療に効くかと言えば、がん細胞は正常細胞に比べて異常増殖するので頻繁に細胞分裂を行うからだ。一般に細胞は細胞分裂を行う時は甲殻類が殻を脱ぐ時と同じで放射線に対して脆弱性が高い。特に、がん細胞は放射線によってコピーミスしたDNAの欠損を復旧することが出来ないので死んでしまう。一方、正常細胞も分裂している時は放射線によりDNA欠損を起こすが、がん細胞と異なり殆どが24時間以内に復旧する。DNAの二重螺旋は、欠損を修復するための冗長情報を保全するためにある。近年、放射線によるDNA欠損を観測するのにショウジョウハエが用いられてきたが、ショウジョウハエはDNA修復機能が著しく脆弱な特殊な生物であることが最近知られてきた。

幼児や子供は成長のための新陳代謝が激しいので大人より頻繁に細胞分裂を起こしているので放射線に対する脆弱性が高いと言われており、その脆弱性は年齢の3乗から4乗に反比例すると言われている。従って、今回の放射線汚染については、まず子供を最優先に守るべきである。大人は、過度に放射能汚染を心配する位なら、むしろ喫煙の方により神経を使うべきである。成人してからも、放射線に対して異常な潔癖性を保ちたいのであれば、がんを発症した時には決定的に有効な治療法を失うことになる。

福島第一原発事故は本当に不幸な出来事であった。放射能汚染については、常に最新の情報を共有し、細心の注意を払うべきであり、特に子供に対しては、いくら注意しても注意しすぎるということはないだろう。しかし、この過度の放射線に対する恐怖心からがん治療に対して放射線治療を敬遠することだけは、ないようにして頂きたい。そして、放射能を理由に無根拠な差別は絶対に謹んで頂きたい。野球人生の最後に巨人軍で活躍された張本勲さんは巨人軍を退団するまで被爆者であることを長い間隠されていた。一方、宇宙で130ミリシーベルトもの被曝をされた後、無事健康で立派な女の子を出産された、山崎直子宇宙飛行士の科学者としての見識と勇気には拍手喝采を送りたい。

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