104 原発と再生可能エネルギー問題を考える

12月25日夜、九州電力玄海原発4号機が検査入りのために休止し、 これで、九州における全ての原発が停止した。九州電力の原発依存度41%は関西電力の48%に次いで大きいので、この結果、九州地区は 電力の安定供給に大きな不安を抱えることになる。一方、東京電力は、福島や 柏崎など巨大な原子力発電所を幾つも抱えてはいるが、原発依存度は25%に留まって いるので、休止火力の再稼働や節電をきちんと行えば、万が一全ての原発が休止しても、 何とか耐えられる構造にはなっている。東日本大震災の影響で電力供給危機が懸念された、 東京電力や東北電力よりも、むしろ関西電力、九州電力、四国電力(原発依存度38%)の 方が、より供給不安が高まったというのは何とも皮肉なことである。大震災後は、 電力を食う産業は、西日本にシフトするのかと思われたが、今は、とても、 それどころではない。逆に、西日本の産業こそが大きな危機なのだ。

原発を除くエネルギー自給率が、たった4%しかない日本にとって原発はエネルギー問題 における唯一の救いであった。ましてや、CO2を出さないという意味でのクリーンな 原発は地球温暖化問題においても、いわば救世主であった。もちろん、放射能という大き なリスクは抱えてはいるが、それは、日本特有のキメの細かさでコントロールすれば、 マネージャブルだと誰もが思っていた。

しかし、今回の福島第一原発の事故は、そうした論理の全てを変えた。私が知る東京電力の 関係者ですら、「よく、あそこで食い止められた」と語っている。チェルノブイリに相当 するレベル7という事故が起きてしまったのにも関わらず、本当は、それでは済まなかった と言っているのだから、何とも言いようがない。もう、この日本で原発を新設することは 不可能だし、現在稼働中の原発も、住民の不安の中で、このまま継続できるかどうかわからない。 しかし、今回の九州電力のように、代替手段が確立していない状態で、いきなり稼働停止 に追い込んでしまうと、もはや人々の暮らしは成り立たない。タダでさえ、求人倍率が0.2とか 0.3とか言っている九州で新たな雇用を創出することが、より一層難しくなるだろう。

さて原発を停止すると電力会社には、どのような影響を与えるのだろうか? ドイツ最大 、欧州最大の電力会社、エーオン(E.ON)は政府が決定した脱原発政策により大幅に収益 が悪化、超優良企業が赤字転落となったため、ドイツ政府を訴えている。エーオン社が 、持っていた原発はたった2基しかない。それでも、もう2度と稼働出来ない原発の 残存価値はゼロだとして減損をせざるを得なかった。さらに、本来はもっと先に予定して いた廃炉に向けての経費を計上し始めなくてはならない。その上、ドイツでは残存の核燃料 にも税金がかけられ続けられるため、赤字は一層大きくなるというわけだ。

一方、日本では、既に廃炉を決めた福島第一原発以外は、浜岡原発も含めて「休止中」である。 「休止中」であれば、発電が出来ない不健全設備とはなるが、将来稼働する可能性を含んでいる ので減損の必要はない。ましてや、廃炉費用の計上もしなくて済む。少なくとも、日本政府が ドイツのように「脱原発」を法制化しない限り、事実上は「廃炉」状態にありながら、「休止中」 の健全資産ということになる。しかし、こうした状態が長続きするのは、やはり異常である。 欧州最大の電力会社エーオンが、たった2基の原発の廃炉で赤字転落するわけだから、エーオン より遥かに規模の小さい日本の各電力会社は、「脱原発政策」の法制化で一挙に存続が不可能 な会社に転落する。これは最早、日本の各電力会社が民間企業として自力更生できる限界を超 えているように見える。

さて、原発に代わるべき再生可能エネルギーの筆頭として挙げられている太陽光発電と風力発電 は、本当に頼りになるのだろうか? はっきり言えば、全くの実力不足である。原発一基分 、100万キロワットを発電するのに、太陽光発電では山手線内の全ての面積が必要で、 風力発電では、さらにその3.5倍の面積が必要となるからだ。日本に現存する54基の原発を 代替するには、一体、どれほどの太陽光パネルと風車が必要なのか、全く気の遠くなる話である。

しかし、だからと言って、日本の貧困なエネルギー自給率を考えるときに、それをしないで済 むような状況では全くない。太陽光発電も風力発電も可能な限り増設していく必要がある。 むしろ、こうした太陽光と風力だけでは全く足りないので、地熱や潮力、小水力、バイオマス発 電など、ありとあらゆる再生可能エネルギーの可能性を追求しなくてはならない状況にある。

今年も、私は規制制度改革分科会のエネルギーWGのメンバーに入れて頂いた。昨年に引き続き、 再生可能エネルギー(以下再エネと略)分野で、これから頑張ろうとされている、太陽光発電、 風力発電、地熱発電、バイオマス発電、小水力発電の事業者協会の方々からのヒアリングを行っ てさらに驚いた。こうした再エネ事業の発展を妨げる規制の改革や緩和が、この1年半の間、 全く進展していないからである。もともと、民主党は規制制度改革には熱心である。自民党時代 は、全く進展がなかったものが、政権交代で、随分進展していると言えるだろう。それでも、 このザマである。

私は、もう我慢がならなくなり思わず発言させて頂いた。「要は、昨年までは電力問題で誰も困っていなかったんでしょ。 電力は十分にあった。原子力が達者に動いていれば、再エネなんて、頑張ってもらわなくて良い。 そんなものは電力事業から見ても迷惑だ。静かにしていて欲しい。そういう状況だった。 しかし、今は違う。明らかに違う。だから、きっと変えられるし変わらないと日本は死んでしまう。」

発電事業者たちが一番悩んでいるのは送電線問題である。電力会社の既存の送電線に繋ぐまでの、 新規送電線を設置する費用負担は発電業者にあることは、皆、承知している。しかし、電力会社 が、まず繋いで良いという許可を出してくれないと繋げない。さらに、どこの地点に繋ぐかという 場所を教えてくれないと繋げないし、また繋ぐ費用の算定も出来ない。そして、送電線の費用算定 も出来なければ、金融機関は再エネ発電事業の採算性もわからないので、資金を貸してくれないのだ。 まず、再エネ発電業者が、一番悩んでいるのは、電力会社が繋いで良いという許可が簡単には降り ないことだという。もちろん、電力会社はダメだとは言ってない。しかし、「わかりました。ここに繋いで下さ い。」とも言ってくれないのだ。要は、「しばらく検討期間が必要です」で止まってしまうのだ。

発送電分離の是非の議論がある。私は、どちらが良いと言えるほどの見識を未だ持ち合わせていな いが、少なくとも、こうして既存の電力会社が新規再エネ発電会社の首根っこを押さえている状態 では、日本で再エネ発電事業が盛んになるはずがない。一方で、既存の原発は住民の反対運動で、 どんどん休止に追い込まれていく。石原知事のように、火力発電の増強を声高に唱える人も居ない。 それでは、日本の電力はどうなるのか?少なくとも、この原発休止と再エネ発電事業の強化という 視点からだけでも、もはや、既存の電力会社だけに頼っていける状態にはなさそうだ。これは、西日本だ けの問題ではない、日本全体の命運に関わってくる大きな問題である。

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