80 低迷する株式市場

本日の日経平均終値は、欧州のソブリン危機を反映して、8374円と2009年4月以来の安値を記録した。世界経済の行く末を案じてだろうが、日本の株式市場は、何の理由につけても下げている。1989年12月29日に38,915円の最高値を付けた日経平均は、1990年の年明けから、今日まで20年間下げ続けている。もっとも、2000年3月31日には、米国発のITバブルに便乗して20,337円まで上げたし、2007年6月29日には、同じく米国の住宅バブルにも便乗して18,138円というピークを記録したこともある。でも、こうした米国経済への便乗も、所詮、便乗である分だけの値上がりしか出来なかった。一方、下げるときは、米国と同じ率で大幅に下げるものだから、日米の株価格差は広がるばかりである。

さて、NYダウに比べて日経平均が見劣りするように見えるが、それは仕方がない。日経平均が日本を代表する225社の平均なのに対して、NYダウは米国の超一流企業30社の平均だからだ。30社は常に入れ替えられ、ついこの間にはGMとAIGもNYダウから脱落した。長年保持し続けているのはGEただ1社だけだ。そして30社のうち、インテル、マイクロソフト、シスコの3社はNYSEではなくて、新興市場であるNASDAQから選ばれている。だから、日経225など、世界で一流のNYダウ30には敵うわけがない。

そのNYSEにしろ、NASDAQにしろ、いずれも、株式市場の本質的な存在価値に悩んでいる。つまり、人々が投資したくなるような優良企業は、皆、潤沢な現金を保有しており、株式市場から資金を調達する必要がない。むしろ、低迷する株価に業を煮やして、潤沢な余剰資金で自社株を買い取っている。自社株買いは、発行株式の希少化により株高を誘発するから、株主にも、そして、多額のストックオプションを配布される企業経営者にとっても好都合なので歓迎されている。しかし、よく考えてみると、株式市場は本来を企業が資金を調達する場であって、企業が資金を還元する場ではない。

そして、優良企業が増資によって株式市場から資金を調達することも最近は殆どなくなった。多くの優良企業は潤沢な現金を持っているのと、もう一つは、コンプライアンスが厳しい株式市場から資金を調達しなくても、銀行金利が安いので、必要なときは、銀行から低利な資金が簡単に調達できることもある。そして、株式市場の一番大事な役割でもあった、新興企業の新規上場が殆どなくなったことも、アメリカの株式市場の存在感を弱めている。新規上場(IPO)が大きく減った理由は、アメリカのストックオプション税制の改定である。起業家は、IPOで得た利益の大半を税金で取られるくらいなら、大手企業に売却して節税できる方を選ぶからだ。こうして、アメリカの株主は、将来成長する可能性のある有力企業の株を買うことが出来なくなった。だから株式市場の低迷は必然である。

こうしたアメリカの株式市場の悩みを、日本の株式市場はそっくり受け継いでいる。増資も、新規上場も殆どなくなった。それに加えて、昨今の長期株安市況である。日本の株価が絶頂期を少し過ぎた1990年3月における、日本の個人金融資産は総額で982兆円。現金預金が448兆円で46%、それに対して、株式は299兆円で30%を占めていた。それから20年後の2011年6月における、日本の個人金融資産は、なんと1,490兆円にまで膨らんでいる。まるで、20年間の日本の景気低迷、株式市場の凋落が嘘のようである。その中で、現金預金は828兆円まで増加し全資産の56%にまで上昇した。一方、株式は189兆円と100兆円以上も減ったので全資産に占める割合は13%までに低下した。それでも、13%もあるではないかと思われるかも知れないが、個人資産家は生株から株式投信へ移行させているので、個人金融資産の中で生株の占める割合は、一けた台の%と極めて希少となった。

こうした個人の金融資産ポートフォリオに関する現在の姿について、大手証券会社の経営幹部は極めて賢明な策だと評価する。これほど長期にデフレが続き、しかも最近は超円高である。銀行金利は殆どゼロだとしても、実質的な運用益は、他のどの運用よりも現金預金が優れていると言うのだ。これが、証券会社の経営TOPが言うことかと全く驚くしかない。さらに株式売買手数料の相次ぐ値下げという環境下にあって、証券会社は株式の売買仲介益には、もはや期待できなくなっている。むしろ、各社ともに、従来の株式の売買だけに留まらず、現金預金の運用も含めて公社債、国債、株式投信と幅広く、個人資産家の運用コンサルタントとして生き延びようとしている。

その証券会社の経営幹部が警鐘を鳴らすのは、個人資産の大半を占める現預金が日本の銀行を通じて、日本国債の購入にあてられている現状にある。近い将来、日本が国家債務破綻になったとき、これらの個人金融資産はどうなるのか? 銀行にはもはや現金はない。すべて日本国債を購入しているからだ。そうでなくても、円は暴落し、最も安全なはずの円ベースの現金預金が大きく価値を毀損する事態にならないか? 証券会社の経営TOPは、このことを心配していたのだ。この心配は決して杞憂ではない。2030年にデフォルトになるかも知れないと言われている日本の国家債務危機は、東日本大震災の影響で、その時期は10年早まったと言われている。欧州やアメリカを見れば、国家の財政危機は必ず金融危機に繋がっていく。現政権及び与党も野党の議員の方々も、次の選挙のことしか考えておられないとしたら、ますます日本を危うい道に導くことになるだろう。

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