324 慰安婦問題に関する日韓合意について

12月28日、日韓基本条約成立後50周年の今年、日本、韓国両政府の精力的な努力により歴史的合意に達したことを、私は素直に評価したい。恐らく、米国政府の強力な圧力があったとは言え、日本政府も韓国政府も、これまでの主張を翻してまで合意に辿り着けたことは、お互いに相当の努力が必要であったと推察される。

私は、韓国の国民感情の奥底まで、深く理解できていないので、軽率な論評は避けたいが、日本政府に関して言えば、いかに米国の圧力があったとはいえ、これまでの旧大日本帝國は一切関与していないという主張を翻して、旧日本軍の関与を認めて謝罪したことは、国際的に見ても大いに評価に値する。

日本政府は、これまで韓国の慰安婦問題に関する公式文書は一切存在しないと主張してきたが、1999年5月14日に公布された情報公開法が施行される2001年4月1日までの、ほぼ2年の間に、多くの中央省庁が過去の都合の悪い文書を大量に焼却してしまったと言われているので、慰安婦問題に関する公式文書が一切存在しないという主張は全く信用できない。

そもそも、欧米を中心とする国際社会は、日本が引き起こした韓国の慰安婦問題に関しては、それほど多くの関心がなかった。彼らが、一番関心を持っていたのは、韓国よりも、ジャワ島における日本軍が行ったオランダ人女性の慰安婦問題である。この問題に関しては、日本政府が公式文書を廃棄したとしても、オランダ側にはきちんとした文書が残っているので、日本政府は釈明するすべき余地が全くない。

特に米国はオランダ系移民が多い国なので、韓国女性の慰安婦問題はオランダの問題と重ね合わせて日本に対する非難と韓国に対する同情が強く出てくるのはやむを得ない。それでも、米国の国益を考える時に、米国政府としては、米中激突という情勢の中で、日本と韓国が、この問題で永くしこりを抱え続けることが好ましくないと考え、日韓両国に相当強い圧力をかけたものと思われる。

そして、かつてないほどの強権を持っていると言われる安部首相が、これまでの主張を翻してまでも、このたびの合意を目指したことは、日本の国益を考えた時に、やはり大英断として高く評価せざるをえない。これまで安部首相を支えてきた超保守的な支持層の抵抗を覚悟した命がけの決断でもあった。私は、安部首相とは、政治的にも経済的にも必ずしも同じ意見ではないが、自らの健康問題も厭わないで世界を闊歩する安部首相の命がけの仕事ぶりには心から敬意を表している。

それにしても、どうして日韓両国の関係は、こうしてうまくいかないのだろうか? 私自身は、これまで仕事で、何度も韓国を訪れているが、少なくとも、私がお会いした韓国の政治家や経済人は、どの方も、立派で敬意を表する方ばかりである。そして、韓国の料理は本当に美味しい。韓国の伝統的な宮中料理も、庶民の家庭料理も『全て美味しい』の一言に尽きる。私は、世界の、どの料理よりも、韓国料理が一番美味しいと心から思っている。

どの韓国料理を食べても、これだけ美味しいと感じるのは、やはり私達日本人のDNAの中に、朝鮮族のDNAが多く引き継がれているからではないだろうか。そうだとすれば、朝鮮半島の人達を卑下することは、日本人である自分たちの祖先を卑下することになる。私達、日本と韓国の人々は好きか嫌いかに関わらず、これまでも、これからも、永久に最も近い隣国関係であることは避けられない。

そして、一部の韓国の人々は、どうして日本を、ここまで忌み嫌うのであろうか? その理由を、私達、日本人は余りに知らなすぎる。私が、韓国を訪問して一番ショックだったことは、以下の歴史的事実である。1910年の日韓併合の後、日本は朝鮮王朝の宮廷を破壊して動物園にした。特に、朝鮮王の住居跡地を『猿山』にしたのだという。日本の朝鮮総督府に、そうした悪意はなかったのかも知れないが、韓国の人達は、その屈辱は今でも忘れてはいない。

それでも、今回の日韓合意に強く反対する韓国の民衆は、今、韓国が置かれた状況を正しく理解できていないとしか思えない。韓国が日韓基本条約成立後、日本からの技術援助で世界一流の域まで興隆した鉄鋼、造船、家電、半導体など韓国経済を支えてきた基幹産業が、今、中国によって、全て脅かされている状況を、どこまで認識しているのだろうか? 韓国の最大の輸出相手国である中国は、もはや早晩、韓国からの輸入を必要とはしなくなる。

その結果、今、日本の主要輸出国である韓国に対して、その品目である製造設備と原材料の輸出先は、韓国から中国へ移る。つまり、今のままだと、韓国は、日本にとって、極めて存在感の薄い存在とならざるをえない。韓国にとって中国は、最重要顧客から厳しい競争相手に変わるという認識が、韓国の民衆には、余りに不足していると言わざるをえない。韓国の将来にとって、日本は、中国以上に、今後とも協調すべき相手なのだという認識の欠如である。

私は、今回の慰安婦問題に関する歴史的な日韓合意を契機に、両国はもっと相互に協力関係を強化していくべきだと思う。そうしないと余りにも勿体無い。日本人は韓国料理や韓国文化が大好きである。韓国人も、全く同じであろう。近親憎悪は、もう一切やめにしましょうよと私は言いたい。

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