311 シリコンバレー 500マイル (その6)

人工知能が、これだけ急速に進歩を遂げたのは、コンピュータサイエンスの進歩と並行して脳科学が進歩したからに他ならない。両方の進歩が相乗効果を持って両者の進歩を推進させた。人工知能とロボティックス、ビッグデータとの三位一体の進歩が大きく貢献していると先述したが、これに脳科学とバイオメカニクスが加わると実に多様な研究分野の拡大に繋がっていく

そうした中で、NASAでロボティックスを研究しているサンスパイラル教授との議論は大変面白かった。彼は、NASAで、人工知能とロボティックス、脳科学とバイオメカニクスを一緒に研究している。将来、宇宙空間で生活するには高度なロボットが絶対に必要だからだ。彼が主張するのは、ロボット制御で一番大事なのは自律分散制御だという。いちいち、センターコントロールに、どうしたら良いかと問い合わせるような制御系では、ロボットはうまく動けないという。

例えば、鶏の頸椎を切断しても、鶏は見事に二足で歩き続けることが出来る。鶏は歩くという行為には、脳のコントロールを受けていないのだという。歩くという行為は、右足を出して次に左足を出すという手順を逐一脳からコントロールされていたら、きっと上手く動けないのだろう。ただ、サンスパイラル教授は言う。「しかし、この鶏は脳の指令がなくても歩き続けることは出来るのだが、何処へ向かって歩いていったら良いのかわからない。それは、脳が決めることだからだ。」という。なんだか、妙に教訓めいた話ではないか。

そうか! IoT (Internet of Things )とは、そう言うことなのだ。蜂や蟻の世界では、女王蜂や女王蟻が、巣の運営に対して細かい指令をだしているわけではない。全て、自律分散システムで動いている。ロボットも同じだ。そして、そもそも、インターネット自体が、自律分散で運用されていて、センターコントロールで動いていない。IoTとは、つまり自律分散システムということなのだ。

このたび、ある日本の自動車メーカーの方と、このシリコンバレーで大変面白い話をさせて頂いた。アメリカでも日本でも、街を走っている自動車は大抵一人しか乗っていない。であれば、自動車は全て一人乗りでよいはずだ。一人乗りの小さいボディーは小さくて、駐車スペースも取らない。そして、例えば、家族4人で旅行するときは、一人乗りの車が4台連なって動けば良い。いわゆるコネクティッド・カーである。つまり、IoTとは、世の中の考え方、成り立ちを大きく変える。

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