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183  お菓子屋さんのゴルフ場経営

2012年11月7日 水曜日

先日、パートナー様の経営TOPの方たちとご一緒に、浜名湖カントリークラブでゴルフをさせて頂いた。溢れるほど沢山の良いお話を伺った中で、私が、最も驚いたのは、同じ静岡県で、今、最も流行っているゴルフ場と言われている富士見ヶ丘カントリー倶楽部の話だった。このゴルフ場は、山梨に本社を持つ、お菓子の製造・販売メーカーであるシャトレーゼが買収する前は、お客もろくに来ない、鳴かず飛ばずの不人気ゴルフ場だったというのだからビックリだ。

そう言えば、私の住んで居るあざみ野にも、東急嶮山ゴルフガーデンのすぐ前にシャトレーゼの直売店がある。交差点にある店で駐車するのが難しいせいで、ひっきりなしに来店するお客は苦労して車の出し入れをしている。とにかくアイスクリームやアイスキャンデーが驚くほど安い。私も、つい沢山買い込んでは、冷蔵庫に入らないと妻に怒られる。このお菓子屋さんが、いや私から見ればアイスキャンデー屋さんが、ゴルフ場経営に乗り出したのかと本当に驚きだった。

富士見ヶ丘カントリー倶楽部に、未だ、一度も見に行っていないのに、偉そうに、こんなカラムに書くのもおこがましいが、ネタの入手先がれっきとした静岡新聞の方なので、話の信憑性は、まず間違いがない。ネットで見ると、シャトレーゼは北海道、山梨、東京、静岡、栃木、長野に合計12のゴルフ場を保有している一大リゾートグループだ。決して、経営者の気まぐれで、落ち目の静岡のゴルフ場を買収したわけではない。きちんとした経営戦略に基づいている。

まず、シャトレーゼは、この富士見ヶ丘カントリー倶楽部を買収すると、フロントのスタッフを全て入れ替えた。お菓子屋さんの経営スタッフに変えたのだ。もっと、判り易く言えば、「オジサン」相手の商売から、「女性」相手の商売へと経営の舵を大きく切った。平日料金も含めてプレーフィーを大幅に安くして、稼働率を高めることを狙っただけではない。ゴルフ場内のレストランも、丼物と酒とたばこの付き合いから、軽食とお菓子とティーのお付き合いに変えた。

コース内の売店も無人化し、アイスキャンディーはタダで取り放題。プレーヤーから見たら、夏の暑い時期には、何とも有難い話だが、所詮、アイスキャンディー代などコストは知れている。そして、お帰りには好きなケーキがお土産で渡されると言うから女性客にはたまらない。もちろん、クラブハウス内の売店は、シャトレーゼの直売店である。確かに、飲酒運転の罰則強化で、ゴルフ終了後の宴会など、もはや、どこのゴルフ場でも見られなくなった。世の中が大きく変わったのだ。

元々、ゴルフ場は紳士の社交場として女性に対しては差別的だった。私が、リコーさんのご厚意で、全英女子オープンのプロアマ戦に招待頂いたゴルフ場は、セントアンドリュースのオールドコースで、リコーさんが、この地で全英女子オープンを開くまで、女人禁制のゴルフ場だった。プロアマ戦を一緒に回らせて頂いた宮里藍さんら、世界の一流女性プロ達は、その時、セントアンドリュース・オールドコース開所以来、女性として、初めてロッカールームを使うことになったのだ。

パルミサーノ氏の指名を受けて、女性として初めてのIBMのCEOになったロメッティ女史が、アメリカ社会に最初に投げかけた問題は、マスターズが開かれるオーガスタのメンバとして女性を認めるかどうかという問題だった。アメリカで最も格が高いと言われるオーガスタのメンバーに、歴代のIBMのCEOは必ず入っていた。そのオーガスタも、セントアンドリュースと同じく女人禁制だったからだ。当然、この問題はIBMのCEOが交代する直前に解決された。ロメッティ―女史が申し込む前にオーガスタは二人の女性メンバーの入会を認めたのだった。

世の中の変化を素早く掴むのがビジネスの勝利者だが、このシャトレーゼの経営戦略は凄い。単なる多角化ではない。そして、お菓子とゴルフという、一見、無関係に見える事業ポートフォリオをレバレッジに結びつけるというのが凄い。そうして、見ると、あの、あざみ野の東急嶮山ゴルフ練習場も、近い将来シャトレーゼの経営に変わっているかも知れない。これから、近くを通りかかったら、良く注意して見てみよう。