2011年12月 のアーカイブ

99 被災県3紙主催の「東北復興フォーラム」を聴いて

2011年12月13日 火曜日

昨日、岩手日報、河北新報、福島民報と日経新聞の4社共同のシンポジウムがザ・ペニンシュラで開かれた。テーマは「東北復興」である。

被災3県の主要紙が揃って公開パネルを開くという機会はめったにないと思い聴講を希望して参加させて頂いた。各紙とも、この被災地を中心に記者を永年経験されて、現在は論説委員をされている方々である。しかも、河北新報の方は、福島県南相馬市のご出身、福島民報の方は三陸のご出身と、それぞれ他県の被災者の方々をご親戚に持たれているので、お互いの困窮した状況にも深い理解を持たれている。

このシンポジウムの感想を乱暴に一言でいうなら、「東京のテレビや新聞で学識経験者や評論家の方々が議論されている話とは全く違う」ということに尽きる。東京にお住みで、高い見識をお持ちの方々は、こうした地元の人々の考えは稚拙で間違っていると言われるかも知れない。しかし、その地で生きている人々の考え方は、良く聞いてみれば、やはり一理ある。東北の被災3県は過疎化が進んでいたとは言え、その生活は大自然の豊かな恵みに抱かれ、都会の豊かさとは別な意味の豊かさを持っていた。そこに暮らしている人々は、衣食住を満たされて いて決して不幸ではなかったのだ。

まず、岩手日報の話に私は耳を疑った。岩手県は、今回の大津波にも耐えられるような高さ14.5メートルの防波堤を再度築こうという計画らしい。この話は、「もうやめよう」と周知されていたのではなかったのか? 地元の市町村は、その県の方針に大反対で、従来通りの6.4メートルの防波堤を再建してくれれば十分と主張しているらしい。理由は、美しい景観を損ねるということと、毎日の生活のなかで海が見えなくなることは津波災害から逃れるという意味でも、極めて危険だというのだ。高さ14.5メートルの防波堤だって、所詮、完全に防ぐことはできないことを、住民は、皆、よく知っているからだ。

岩手も宮城も含めて三陸海岸で今回、一番津波被害を受けた人々は、海を相手に生活する漁民である。彼らにとって、海は恐ろしい存在ではあるが、こよなく愛すべき存在であり、毎日の生活のパートナーなのだ。海から吹いてくる風や、匂いを知って、漁や養殖の仕事ははじめて可能となる。だから、高い防波堤で海と生活が遮断されるということは、その地で生活すること自体を断念することにほかならない。そして住民の仕事場である、漁港や冷凍倉庫、加工場は海岸に立地しなくてはならないので、そこが危険だと言うなら、もはや仕事にはならないわ けだ。

そして、漁協組織も岩手県と宮城県では全く異なる。宮城県が県単位の単一組織なのに対して、岩手県は100近い零細漁協の集団である。漁協を通じた意見集約の形も自ずから異なってこよう。ただ、両県の漁協ともに、村井宮城県知事の漁業権への企業参入には猛反対している。最初、この話を聞いたときに、私は、規制制度・改革分科会に参画している立場から、「また例の既得権の話だな」と思ったのだが、今回のシンポジウムを聞いて、その考え方が大きく変わった。

三陸沿岸の漁民たちは何百年もの隣人同士との漁業権の争いの中で、資源保護と漁民の共存に関する知恵を、それぞれの浜ごとに集積をしてきた。同じ浜で働く隣同士では、獲る魚の種別を変えたり、養殖する対象も共存できる種に変えてきた。つまり、「浜(海)と漁民は、共に同一の生態系をなしている」というわけだ。私は、この「生態系」という言葉に思わず唸ってしまった。つまり、海も、漁民も一緒に生きているのだ。だから、漁民たちは、海を危険視して、防波堤で自分たちと遮断するという発想には絶対にならない。それは、海も自分たちも、互いに「死」を意味することになる。そして、こうした生態系の中に、どういう考えか想像もつかない他人(企業)が、土足で入り込んでくることには我慢がならないのだ。

三陸で最も被害を受けたのは漁民である。彼らの関心事は、震災直後の「衣食住」から「医職住」に変わっている。特に重要なのが「職」だ。彼らは、永年続けてきた漁師を続けたい。そのためには、一切の難しい話は要らない。漁船と漁港と冷凍倉庫と加工場があればよい。住宅などは、二の次だ。まずは、毎日の生活の糧を得る収入が必要で、それは生き甲斐にもつながる。彼らは、決していつまでも施しを望んでいるわけではない。水産業は岩手、宮城の2県だけで全国のほぼ1割を占める。つまり、岩手県も宮城県も水産業は県の最大の産業というわけだ。だから、少なくとも三陸の復興は水産業の復興しかありえない。地元の人たちが、東京から来て「スマートシティ」などと言った「おとぎ話」をしても、それが三陸の復興とどういう関係にあるのかさっぱり理解できないのも無理はない。

そして、次は福島県である。福島民報からすれば、福島は「未だ震災が進行中」というわけだ。福島県民は国も県も市町村も全てが信用ならないと思っている。特に、原発周辺の住民は避難命令を受けながら「どこに避難すべきか?」を知らされていなかった。その後、SPEEDIの情報から避難先の汚染度が、今まで住んでいた土地より高いことを知らされて、住民の怒りは極限に達したのだ。日本全国から福島市や郡山市に支援に来た方々が「全てが日常的で、日本のほかの地域と何も変わらない」と言う。それに対して福島民報の方は「しかし、よく見てほしい。子供が見当たらないでしょ。赤ちゃんを抱いたお母さんが居ないでしょ。」と言う。たまに、町で子供や赤ん坊に会うとびっくりするそうだ。

多くの福島県民が東電や国を信用しないのは理解できるが、県や市町村まで信用しないのはどういうことだろうか。実は、浜通り、中通に住む半数以上の福島県民は、福島を出たいと思っているのだそうだ。もう、既に5万人以上が県を出ている。そういう県民にとってみれば、県や市町村の施策の全てが、住民を福島県に留め置く施策のように思えてくる。今、福島県民の第一の願いは除染だと言われているが、それも多くの福島県民は除染の限界を既に知っている。除染したはずの場所の放射線値が下がっていないのと、汚染土を持ち込む場所がないために、除染した場所の近くに汚染土が、うず高く積まれているからだ。真っ先に、この汚染土を集積する場所を決めないと、これから除染など出来るはずがない。

そして、さらに問題は、世論を高揚する怪しい学者達だと言う。福島民報の見識から見て、納得のいく論理を展開する学者ほど、御用学者として糾弾されてしまうからだ。まるで、文化大革命時の人民裁判の様相すら示しているという。こうなると、もう冷静な議論など全く出来ないから、見識がある学者ほど沈黙を保ってしまう。これで事態は、ますます悪くなる。一部の過激な環境学者たちが、福島の評価を必要以上に地に落としているのだという。

しかし、よく考えてみると、福島県から出ていきたいと願う人々の支援を、福島県や福島県の市町村にさせるのは、あまりに酷である。これこそは、国が行うべき課題ではないだろうか? そして、それは、本当に有効かどうか、わからない除染作業に優先して行われるべきではないだろうか? 私は、このフォーラムを聴いて、そのように思えてならなかった。

 

98 スパコン「京」の意義

2011年12月11日 日曜日

先週、金曜日に、スパコン「京」が設置されている、神戸の理化学研究所で開催されたシンポジウムを聴講させて頂いた。このシンポジウムは、文科省が「京」を使用して研究開発を行うために選定された、6グル―プの内の一つである分野4 「ものづくり分野」に関するシンポジウムだった。つまり、この分野4のグループはスパコンの産業応用に関する研究開発グループである。資源に乏しい日本が、今後も永続的に繫栄していくためには、「ものづくり」に頼らざるを得ないわけだが、「品質の良い物を安く大量に作る」という、従来の「ものづくり」の分野は今では、韓国、台湾、中国に押されて精彩を欠いている。日本は、もはや従来とは違う角度からの「ものづくり」を目指す必要に迫られている。

それでは、例えば、スパコンを利用して、どのような分野で画期的なブレークスルーが生まれるのだろうか? そうしたヒントが聞けないかと思い、神戸に出かけて行ったわけである。この分野4を含む6つの分野選定にあたっては、私も文科省次世代スパコン戦略委員会のメンバーとして深く関わった。結果的に、この分野4は、東大生研の加藤千幸教授が率いる「革新的ものづくり」グループと、JAXAの藤井孝蔵教授率いる宇宙航空機器開発グループ、そして原子力研究所と、日本を代表する三つの卓越したスパコンの研究機関を核として、多くの大学、研究機関を包含することになり、結果として、日本を代表する優れたスパコン研究者を多数抱える一大研究集団となった。

もともと国家プロジェクトとして今回開発された巨大なスパコン「京」の存在する意義とは、従来のスケール、あるいは従来の速度のスーパーコンピューターでは実現できなかった研究が、「京」で初めて実現できるようになり、なおかつ、その研究成果が人々や社会に大きな成果をもたらすことにある。言うのは簡単だが、そんな例は実際にあるのだろうか?と、私自身が以前から疑問に思っていた。そして、このシンポジウムでは、こうした私の疑問に応えてくれる「乱流」という非常に良い、また典型的なキーワードを見つけることができた。さて、この「乱流」とは一体何だろうか、文字通り「乱れた流れ」である。

わかりやすく言うと、飛行機は翼の周囲に発生する「乱流」によって空に浮かび、ジェットエンジンが噴射する「乱流」によって前に進む。自動車の燃費も、空気抵抗と関係がある、この「乱流」に影響されるし、また高速の走行安定性、あるいは強風の中でカーブを回る大型トラックの安定性までもが、この「乱流」に関係している。また、原子力発電の代わりに脚光を浴びだした石炭火力発電においてCO2を出来るだけ出さない発電効率の良い「石炭ガス化燃焼」についても、この「乱流」は大きく関係しているのである。

ところが、これまで「乱流」解析は、あまりに計算量が多すぎて「実計算」は、事実上不可能と言われてきたのだ。そして、今回開発された「京」ですら、この「乱流」の実計算に対しては十分ではない。しかし、ようやく、実現できるようになったということは価値がある。さて、この「乱流」現象は、物体表面の、ほんの僅かな突起や溝が大きな影響力を持つことから、緻密に正確に計算する必要があると言うのだ。例えば、ドイツのアウトバーンを高速で走行する際に、ドイツの高級車は極めて安定的に走るのに、ある日本製の車は、どう工夫しても安定に走れなかったという。つまり、高速走行すると後部のトランクがふわふわ浮いてしまうのだ。この問題を「乱流」解析で長時間スパコンを稼働させて分析してみたら、フロントピラーのほんの少しの膨らみが原因だったという。ドイツ車は高速走行すると乱流がトランクを上から車を抑え込み、その問題の日本車は乱流がトランクを下から持ち上げていたのだという。

「乱流」解析が進むと、自動車の形状デザインが簡単に決められないのだという。こうした高速走行の安定性だけでなく、燃費や、騒音、筐体の剛性まで、「乱流」の影響を大きく受ける。しかも、乱流は、車の表面の、ほんの1ミリ以下の形状の変化でも大きく影響を受けるという。すなわち、あらゆる条件でベストを満たす車のデザインというのは、そう何通りもないというのだ。したがって、今後、こうした乱流シミュレーションが進展すると、もはや画期的なデザインの車は出てこないことになる。つまり、裏返せば、画期的で、素晴らしいデザインの車は、何らかの欠陥機能を持っているということになるだろう。

そして圧巻は、JAXA藤井先生の新しいコンセプトに基づく翼の開発に関する話である。飛行機の翼は、もともと「乱流」によって生じる揚力で浮いている。ところが、藤井先生に言わせると、もう100年以上にも及ぶ翼の研究で、翼の形状に関して工夫する余地は全く残っていないのだという。さて、表面上の僅かな凹凸で乱流が生じて揚力や推進力に大きな影響を及ぼすということは、逆に言えば、物体の表面上に、僅かな乱流を人為的に起こすと、それだけで揚力や推進力に大きな影響を及ぼすことができるはずだ。少なくとも理論的にはそうである。

藤井教授たちは、翼の表面にプラズマ素子を設けて極めて微小な乱流を起こすと、それがきっかけで大きな乱流に成長し、揚力や推進力に大きな影響を及ぼすことをコンピューターシミュレーションで突き止めた。さらに、そのプラズマ素子による微小乱流は素子が定常的にONになっているときよりも、パルス状に間欠的にONにするほうが影響が大きいこともわかった。さらに翼の上にプラズマ素子を、どういう大きさで、どういう間隔でならべるか? あるいはプラズマ乱流の方向をどう変えてやるかなど、全てコンピューターシミュレーションで実験を行った。

その結果、実機においても、翼の形状や角度に関係なく、プラズマ素子の働きを制御することで揚力や推進力を自在に制御できることが確かめられた。これこそ、全く、新しい発想であり、イノベーションと言えるだろう。こうした新技術を用いれば、飛躍的に省エネが可能な飛行機が開発できるかも知れない。もはや、コモディティを大量生産することで、日本の再生は難しい。一つ一つが微妙で繊細な技術を駆使してニッチな領域を幾つも開発して、新興国の追い上げが難しいブルーオーシャンでビジネスを行っていくしか日本に残されている道はない。日の丸スーパーコンピューター「京」が、こうして日本の繊細な「ものづくり」に貢献できれば、それは素晴らしいことである。

97 ミッションヒルズCC

2011年12月6日 火曜日

香港経由で深圳のミッションヒルズリゾートに行った。その中にあるミッションヒルズCCは全12コース、合計216ホールを擁する世界最大のゴルフ場である。もちろん、私は、ここにゴルフだけに来たのではない。富士通中国が、在中国の日系企業12社のTOPを招いて勉強会を開いた。私も、ここで講演をさせて頂くと同時に、お客様にも講演を頂き、中国から見て世界がどう動いているかなど、一緒に多くを学ぶことが出来た。そして、翌日はレッドベターコースという平常時のスコアを軽く10以上は超えるという難コースに挑戦した。アメリカのゴルフ愛好家が難コースを好むのに対して、一般的に日本のゴルファーは難コースを嫌う。お客様の中には、途中で怒って帰られる方もいるそうだ。しかし、さすがは中国でビジネスをされておられる方々のメンタリティーはアメリカ気質だと見えてゴルフも含めて全て挑戦的である。不平を仰る方は一人も居なかった。もちろん天気も良かったし景色も抜群に美しかったこともあるだろう。以下、この勉強会及び経由地の香港で見聞きした話をご紹介したい。

まず、日本の代表的なメガバンクの中国代表の方から、最近の中国の経済動向について、お話を伺った。リーマンショック後の景気高揚策として中国政府が投じた4兆元(約60兆円)も殆ど発注済みとなり、この後の施策が待たれていたが、このたび、「保障住宅制度」として広さ50-60平米の低所得者向け住宅を1000万戸建設する計画が発表された。この住宅は一部分譲も含まれており、その販売価格は、殆どコスト渡しで日本円に換算して360万円くらいだと言うので、総額36兆円、現在の為替レートで言えば3兆元規模になるのだろうか。低所得者向け住宅として分譲もあるというのが興味深いが、口の悪い人は、抽選に当選したら直ぐに転売してしまうのではと噂している。北京や上海で行われている自動車のナンバープレート発行の抽選も、本当に公正に抽選しているのかと市民は不満を言っているので、この分譲住宅も少し臭い話になるかも知れない。それは、それとしても、中国政府は、この3兆元という巨額の投資を、これから国民の大きな不満につながるかも知れない格差是正のために使おうとしていることは確かである。

そして、マテハン(搬送コンベアライン)の世界的大手企業から伺った話は、世界中で景気の悪い話の中で中国とアメリカ市場だけは、すこぶる景気が良いのだという。そして、アメリカと中国では投資目的が全く違う。つまり、中国市場での商談の殆どはネット通販の配送センターだという。今、中国ではネット通販が物凄い勢いで伸びている。ひょっとすると小売店舗網が中国全土を覆いつくすまでにネット販売の方が先行してしまうかも知れない。そして、このネット販売の信頼性を高めるために殆どのネット通販にはチャット機能が用意されており、友人と一緒に買い物をするような、あるいは店員と対面販売するような感覚で買い物が出来るしかけになっている。一方、アメリカでのマテハン投資は純粋な製造工場だという。オバマ大統領の輸出倍増による雇用拡大政策が、単なる掛け声倒れにはなっていないという証明でもある。先日、アメリカの失業率が何年ぶりかで9%を下回ったのは、そのためかも知れない。

TPPによってアメリカに日本の農業を滅ぼされると恐れている人達がいるが、アメリカの本当の真意は製造業の輸出拡大にある。農業は、これ以上、増産しても雇用を増やさないし、世界中の天候不順で別に日本に売らなくても何処にでも売れる。そして、この中国とアメリカのマテハンの使い方を見ると、これまでの常識と大きく違ってきた。中国はサービス業の高度化に、アメリカは製造業の復活に大きな投資をしていることがわかる。世界は、常に、これまでとは違った方向に絶え間なく動いている。何年か前に聞いた話をいつまでも同じように話しているとトンデモないことになる。

しかし、香港は何で、こんなに賑やかで華やかなのか? もちろんクリスマスシーズンということもあるだろうが、それだけだろうか? まず、物販という面では、Appleの香港直営店がiPadの売上でダントツ世界一になったのだという。原因は、中国本土からのまとめ買いだ。一人で何ダースも買っていくのだという。理由の一つは、中国で買うと偽物を掴まされるからだというが、本当の理由は米ドルにペッグした香港ドルが人民元に対して下がっているという為替の問題と、もう一つは消費税がゼロだということだ。従って、広州からは新幹線で、深圳から中間層が自家用車で皆、香港に買い物に来る。これでは、広州、深圳の高級デパートは商売にはならない。交通インフラの発達が地方都市の消費経済を破壊するというのは、日本だけの事ではない。

香港の景気が良いのは、物販はほんの一部で、大きな要因は金融だ。今や、香港はアジアのスイスとなっている。中国を含むアジアの富裕層の節税対策の拠点となっている。架空のお金で利ザヤを稼ぐロンドンやニューヨークの金融ビジネスと異なり、香港は富裕層のリアルなお金を扱っているのでリスクが全くない。そして、顧客は金融エージェントに対して投資利益など誰も望んではいない。密かに安全に預かっていてくれれば、それだけで十分だ。この2-3年でHSBCがダントツ世界最大の金融機関になったのも頷ける。HSBCは富裕層に向けて3人までの共有名義の口座開設を香港でサービスしているので、日本の資産100億円以上の富裕層は、殆ど皆、このHSBCの口座に資産を移していると言う。お祖父さんと、息子と孫の3人で一つの口座を共有すれば、遺産相続など関係ない。民主党が、今さら、富裕層向け相続税課税強化など講じても、もう時既に遅しである。今や、夫婦で密かにエコノミークラスに乗って、せっせと現金を香港に運んでいるのは資産数億円クラスのプチ富裕層だけだと言う。

そんな中、香港きっての老舗ホテルであるペニンシュラーでは、中国人が大好きなフカヒレを出さなくなった。ヒレだけ取って残りを全て捨ててしまう中国のやり方が残酷だという欧米の動物愛護団体の非難があって、それに応じたという。最近は欧州でもフォアグラの作り方が残酷だといって食べないのだとも言う。もはや、香港は中国であって中国ではない。むしろ中国人の富裕層は、この香港の1国2制度の旨みを十分に享受している。2045年と言われる香港の中国本土統合は、さらに延びそうだ。むしろ韓国が済州島を1国2制度化して香港の繁栄を模倣したいと準備している。国の経済の繁栄を考えるには富裕層を排除するよりも利用した方が余程うまく行くと言うわけだ。中国も韓国も本当に強かである。