2011年5月 のアーカイブ

45 住民票と戸籍

2011年5月28日 土曜日

来週、水曜日から3日間の予定で韓国の電子政府、電子自治体の見学に行く。空港(入出国管理)、市役所、病院、図書館など、盛り沢山の見学スケジュールである。元々、日本と韓国は、世界でも稀なシステムである、戸籍、住民票、印鑑登録という3点セットで住民サービスを行っていた。最初は日本の住民サービスシステムを模倣した韓国が、いつからか、日本を追い抜いたのか大変興味深く思っていたが、先週、韓国が既に戸籍を廃止したと知って、もう行く前からショックを受けている。

確かに、私は男3兄弟の長男で、私達兄弟は、皆、故郷である平塚市を離れて一家を構えて居る。平塚市の実家には80歳後半の母親が一人で暮らして居るだけだ。そうだからこそ、皆、この平塚で生まれ育ったことを記録に留めておくために、3人で戸籍だけは平塚市に残すことを決めた。果たして、その約束を一番最初に破ったのは、この私である。何しろ、家も転々と引っ越しをするものだから、戸籍謄本を年中請求することになる。その度に、母親に平塚市役所まで取りに行って貰っていたが、もう80歳も後半になると、そう年中頼む訳には行かないので、つい最近、戸籍を現住所と一緒にした。私の息子など結婚して籍を作る時に戸籍はちゃっかり私の現住所に変えていた。

戸籍が現住所と一緒になると、確かに戸籍としての意味が殆どない。戸籍を廃止するという、韓国が行った改革も、その合理性が良くわかる。さて、アメリカには住民票がないと、以前に、このカラムで言った。アメリカの住民管理は運転免許証が担う。そこで、以下に、私が経験した実に貴重な、お話しをしたい。私がアメリカに転勤するとき、長男は大学生、次男は高校生であった。当然、私は、単身赴任である。アメリカ政府が発行した労働ビザを持ってアメリカに行くので、日本の区役所には転出届を出す。そうすると、どうなるか? 住民票には米国カルフォルニア州クパチーノ市へ転出と書かれて、私は住民票から消えるのだ。当然、世帯主は妻になる。もうおわかりだろうか? 私の一家は、突然、母子家庭になったのである。

さて、横浜の区役所から転出票を貰ったが、私は、その転出票を出す所が無い。だって、アメリカの市役所は住民票など管理していないのだから。これが、後日、極めてやっかいなことになる。しかし、連邦自動車局(DMV)で運転免許証を取得した私は、運転免許証の住所欄にクパチーノ市と書いたので、そこで立派なクパチーノ市民となって居る。市役所になど最初から行く必要がないのだ。さて、そこから、おかしなことが沢山おきるのだ。世界中、どこへ行っても、当然、戸籍や住民票や印鑑登録があるものだと思っていたらとんでもない事になる。

まず、私がアメリカ駐在中に長男は大学を卒業し、会社に就職した。最近、きちんとした会社は入社時の手続きで、戸籍は請求しない。提出するのは住民票だけである。その住民票を見た、会社の人事部門は長男を母子家庭で育った苦労人と見る。父親が居ない理由は、病気や事故で死別したのか離婚をしたのか会社は、本人にも聞かないし、全く分からない。もちろん、分からなくて一向に構わない、それで良いのだ。もちろん、会社は家族構成について入社の時に、一回しか提出を求めないから、その後、父親がアメリカから帰って来たなど、今でも知る由も無い。

以上は、おかしな話だが人畜無害な話題提供ですむ。ところが、それでは済まない話もある。留守中、古い車が故障ばかりするので、妻は廃車にしたいと言ってきた。もちろん、反対することでもないので、「どうぞ」とゆっくり構えて居ると、廃車にするには、所有者である私の印鑑登録証明が要ると言う。ご存知のように印鑑登録証明は住民登録がなされてないと発行されない。私は、もはや、日本の何処にも住民票が無いのである。

どうしたら、良いのかとあちこち聞いてみた。すると、サイン証明というのがあれば、印鑑登録証明の代わりになると、区役所の担当者は言う。さて、サイン証明とはどこで貰うのか? これもあちこち聞いてみた。どうやら、サンフランシスコの日本領事館で貰えるらしい。果たして、日本領事館に行くと、心得たもので、直ぐに貰う事が出来た。このサイン証明をもって、日本の車のディーラにて、所定の書類に、実印の代わりにサインをしてサイン証明書を添付して、やれやれと思って、やっとアメリカに帰国した。結果は、どうだったのか? 日本の陸運局は、前例がないと言う理由で慈悲もなく却下した。つまり、私が日本に帰るまで車は廃車できなかったのである。

もう、既に、お分かりの方も居るだろう。私が帰る時の処理はどうなったのだろうかと。つまり、日本の区役所は、他の地域からの転出票がないと転入させてくれない。ところが、私が、アメリカで住んでいるクパチーノ市は転入処理が必要ないだけでなく、転出処理も要らない。逆にいえば、転出票など出してくれないのだ。さて、どうしたものだと悩んでも仕方がないので、取り敢えず横浜の区役所に行った。所定の転入届けを書いて提出した。それしかない。しかも転出元は米国カルフォルニア州クパチーノ市と書いたが、それに関して、何の証明書もない。しかし、そこが日本の区役所の素晴らしい所である。転出するときも、転出先を「アメリカ」と書いたら、そのまま信用してくれて住民票から抹消してくれたのと同様、戻ったときも、転出元を「アメリカ」と書いたら、何の証明書もなく、元の住民票に戻してくれたのだ。好い加減と言えば好い加減だが、鷹揚と言えば鷹揚でもある。

要は、何を言いたいかと言えば、私達は、戸籍や住民票や印鑑登録という住民管理システムは、天から与えられたもので、完全無欠のものだと思っていたら、それはとんでもない話だということである。このグローバル時代にあって、お父さんがチョット海外に単身赴任したら、それだけで全てが破綻してしまうほど脆弱なシステムなのだ。それを補うために、私がアメリカから帰って来たと申告すれば、区役所の窓口担当者は信じて従うしかないのである。もし嘘だったらどうなるか、実は別な人が帰って来たことにしてしまったら、そこで父親が入れ換えってしまうのである。何だかミステリー小説になりそうである。だから、韓国が戸籍を廃止したと言っても、別に驚くには当たらない。韓国はIMF介入の塗炭の苦しみを経験して、日本より先んじて「世界市民」になったのである。

44 ドーヴィルG8サミット

2011年5月27日 金曜日

5月26日からフランス ノルマンディーの保養地ドーヴィルでG8サミットが開催された。初日から福島第一原発事故の問題が取り上げられ、思いがけず、日本の菅総理の存在が脚光を浴びたが、もちろん、これが今回のG8サミットの主題にはなりえない。私が、このG8サミットとかかわり始めたのは、2007年ドイツのハイリゲンダム・サミットからである。それは、この年から日本・EUビジネスラウンドテーブル(日・EU BRT)のメンバー(プリンシパル)になったからだ。つまり、日・EU BRTはG8サミットの前の週に開催と決められていた。なぜなら、日本とEUの首脳は、よほどのことが無い限り、G8サミットで首脳会談を行うからである。さらに、G8は、英国、フランス、ドイツ、イタリアとEUの主要4ケ国が参加していて、これらの各国首脳と一同に話ができるということもあっただろう。

私が、今年のG8サミットの開催で一番興味を持っていたのは、これがG8最後のサミットになるかも知れないということだった。ここ数年、中国やインド、ブラジルなどの新興国の台頭によって、G8サミットの存在意義が問われてきた。口の悪い人の中には、「イタリアとカナダを外して、中国とインドを入れたG8にしたらどうか?」と、憎まれ口をいう人も居たくらいだ。もちろん、このG8の替わりとして考えられているのは、昨年、公式の第一回が韓国で開催されたG20である。そして、今年、2011年はフランスが、G8とG20の両方の主催国となることは、ずっと以前から決まっていた。それで、いつも革新的な動きを見せるフランスが、今年、G8とG20の統合を行うのではないかと推測されていたのだが、果たして、そうはならなかった。

G8のGが「Great」でGDPの大きさを意味しているとすれば、昨年、中国が世界第二の経済大国になった時点で、もはやG8の存在価値はない。かつて、G7と呼ばれた時代には資本主義経済ではなかったソ連は入っていなかった。そして、あらためてG7とは、アメリカ、日本、ドイツ、英国、フランス、カナダ、イタリアを言う。そのG7+ロシアでG8なのだが、G8の様子をテレビで見ていると、G7+1の1はひょっとしたら日本ではないのかとも思えないか? 会議の途中の休憩時間で、日本の首相だけが、各国の首脳達の歓談から浮いているからだ。それは言葉の問題だけではなさそうでもある。穿った見方かも知れないが、かつての帝国主義時代の西欧の列強たちに、脱亜入欧を目指したアジアの新興国である日本が無理をして加わったという構図に見える。

2007年、ドイツで開催されたG8ハイリゲンダム・サミットでの主要議題は「地球温暖化」だった。ここでは、CO2排出削減に関する先進国と新興国を含む途上国との問題に関してG8としての取り組みについて議論が行われた。2009年、イタリアでのG8会議は、急遽、直前に大地震が起きたラクイラでの開催が決まった。このため、私達、日・EU BRTはイタリアでの開催を断念して、ベルギーのブルッセルで会議を行った。このイタリアでのG8会議のテーマの中には、イタリア政府の強い要請によって、地中海を渡って北アフリカから押し寄せる「不法移民の問題」が取り上げられたと聞いている。そういう意味で、今回のドーヴィルサミットは、大混乱が続いている北アフリカの問題が大きなテーマとなるに違いない。ヨーロッパにおける不法移民の問題は、アメリカにおけるメキシコ国境の問題より遥かに複雑である。EUは、事実上国境が無いので、一度、EUのどこかに入国できれば、後は、英国を除いて、EU域内ならどこへでも自由に行けるからだ。

そして、もう一つは、北アフリカから端を発した、ジャスミン革命が中東全域に広がっていることだ。従来のアメリカ vs 中東、イスラエル vs 中東、アメリカ vs テロリストという関係が、今後、大きく変化するかも知れない。アメリカが、だいぶ前から、その存在が判明していたビンラディンを殺害したのも、こうした背景があるだろう。9.11以降、アメリカは、どうしてアメリカが中東地域から、こんなに嫌われるのだろうと、ずっと調査してきたらしい。その結果、中東の人たちは、決して「アメリカ」や「アメリカ人」が嫌いなのではなくて、「アメリカがすること」が嫌いなのだということが判ったらしい。アメリカ以外に住む人は、皆、昔から判っていたことをアメリカは、ようやく理解したようだ。当然、アメリカは、今回、北アフリカから中東に吹き荒れるジャスミン革命を契機に、これまでアメリカを憎んできた人たちとの関係を改善する絶好の機会だと思っている。

そして、もう一つ、この北アフリカから中東にかけての地域は、旺盛な世界のエネルギー需要にとって極めて重要な地域でもある。福島第一の原発事故の問題は、もちろん、G8諸国にとって重要な問題であることは間違いないが、各国の首脳の頭の中では、再び、原発から化石燃料への回帰を目指した、新たなエネルギーの安全保障戦略のことが、ぐるぐる回っているに違いない。もし、日本の主要メディアが原発問題のことしか取り上げないとすれば、それは、また例の視界狭窄症に陥っていると考えたほうが良い。だからこそ、G8はG20とは別に必要な存在だという認識がG8各国に共有されたのではないか?と思うのは私の考えすぎだろうか。

43 福島第一原発1-3号機メルトダウン

2011年5月25日 水曜日

私の会社では、外交評論家である岡本行夫さんに定期的な勉強会をお願いしている。昨日は、岡本さんの事務所の顧問を勤められている、元三菱マテリアル副社長の冨士原さんも、ご一緒に講演され、今回の東日本大震災と福島第一原発の問題について、いろいろ教えて頂いた。おりしも、新聞やTVでは、福島第一原発の2-3号機も1号機同様メルトダウンしていることを東電が認めたと報じている。この報道を聞いて、今更、驚く方は極めて少ないと思われる。逆に言えば、殆ど、公知の事実になってから正式に認めたような気もしないではない。

岡本さんは、歯に衣を着せぬ直球型の議論をされる方であるが、決して原発推進者でもなく、また原発排斥者でもないので、現実を直視した極めて冷静な議論をされていた。また、冨士原さんは、原子炉燃料を加工製造する企業のTOP経営者として、原発については高い見識をお持ちであり、私としても大変参考になった。

昨日の講演で改めて、印象に残ったことを幾つかご紹介したいが、まず最初は、核燃料は核分裂反応を停止させた後、「対数時間」でクールダウンしていくということだ。これは二つのことを言っている。一つは、核分裂反応停止直後の、しかるべき対応処置について1分、1秒の遅れは、その後の何年、何十年分にも相当するということだ。つまり初動のミスが決定的になるということ。今、国会で議論されている海水注入の一時停止の問題である。「対数時間」のもう一つの意味は、完全にクールダウンするには何年、何十年とかかるということである。

そして、福島第一原発の防波堤の高さが5.7mだということ。これは、想定される津波の最大値にぴったり合わせているわけだが、通常の土木設計の概念は「想定被害の最大値」の2倍から、3倍で設計をするのが常識だそうだ。そうした安全係数をかければ、確率は3σの外に行くので「常識的な安全確保」がなされるというわけだ。つまり、この防波堤の高さ設計が一つの象徴であり、「絶対安全」を豪語していた福島第一原発は随所で、日本の土木工法の常識を満たしていなかったといえると言う。

そして、菅総理の浜岡原発停止要請の根拠についてである。確かに、今年1月の日本地震学会の報告書では、今後30年間に浜岡原発が大地震に遭う確率を84.5%としており、他の原発地域の2-3%に比べて格段に高い。これを見ると、菅総理の決断も正しかったかなと思えるのだが、岡本さんが指摘するのは、この今年1月に予測された福島第一原発の今後30年間の大地震遭遇確率である。なんと、0.0%なのだ。もう一度言うと0.0%である。日本地震学会は、福島第一原発は今後30年間に大地震に遭う確率は殆どゼロだと言っていた。そうした地震学者の意見をベースに浜岡原発を止めたのは全くおかしいと岡本さんは言う。

大体、アメリカでは、地震の予測をしようとすること自体が。「非科学的」だという常識が通説となっていて、むしろ地震が起きたときに、どう対処すべきかという議論に正当性を見出しているという。そういえば、地震予知学に関しては、あの四川省大地震が起きるまで、中国が最も盛んだった。それまで、中国では、地震は完全に予測可能とされていた。だから、耐震建築など必要ないのだと、地震が来る前に逃げればよいのだから、建物に過度の耐震構造を持たせる必要が無いという論理である。しかし、あの四川省大地震のあと、中国の地震予知学はさっぱり精彩が無い。ひょっとすると地震予知学というのは、政治に利用されやすい学問なのかも知れない。

さて、今回の福島第一原発事故を契機に原発排斥運動が世界中で盛んになってきた。また、自然エネルギーにビジネス活路を見出そうとしている人たちが、この機を捉えて、実力を遥かに超えた過度のアッピールを行い始めている。風力発電や太陽光発電が原発の代替役を果たすのは、多分、10年や20年では済まない。50年、100年のレンジで考えざるを得ないだろう。私は、今まで、何度も言ってきたが、日本は風力環境や太陽の日照時間で世界の中でも不利な地域にいる。「日本中の家庭の屋根に太陽光発電を!」などと馬鹿なことを言っている政治家も居るようだが、日本は、2030年には全世帯の半分が無所得世帯になる。どうして無所得の家が屋根に高価な太陽光発電パネルを付けられるのか?ちょっと、その、お粗末な頭でも考えられるだろうと言いたい。要は、夢を論じるのではなくて、もっと現実を語ろうと言いたい。

そして、私は、決して原子力発電の排斥論者ではない。少なくとも、今まではそうだった。そう、今回、2週間にわたって、福島を訪れる前までは。私が、最初に訪れた会津地方は2000mの山並みで囲まれた、東京以上に安全な場所である。それでも、福島県というだけで、不当な風評被害に苦しんでいる。そして、次に訪れた福島県伊達市の工場でも、数々の不当な差別に苦しんでいた。伊達市は、福島第一原発から60km離れているが、福島市と隣接するとともに、すっかり有名になった飯館村とも隣接している。当然、飯館村から通って居る人も何人かいる。だから、万が一に備えて、毎日、工場の外と中の放射線量をリアルタイムで計測、モニターしている。そうした緊張感の中で、地震で徹底的に破壊された工場を従業員全員で一生懸命復旧作業を行った。もちろん自分達の職場を確保するためである。当然、会社も、この方々のために出来ることは何でもするだろう。

こうした福島県の現場を見て、住民の方々と話をしてみると、今回の原発事故は、やはり取り返しの付かないことをしたのだと思う。もう、日本の原発全体が元には戻れないのだと思わざるを得ない。失敗学で有名な畑村先生を長とする事故調査委員会が発足したが、この委員会が、いくら綿密に調査しても、もはや失敗学の成果である「再発防止策」は不要であろう。日本では、もう、二度と原子力発電所が建設されることはないからだ。福島県の住民の方々の意見を代弁すれば、「ノーモア広島、ノーモア長崎、ノーモア福島」であろう。そして、これは福島県だけの意見に留まらない、今後、日本全体の意見になっていくことは間違いない。

さて、そうした前提で、我々は電力対策として、何を考えなければならないか?である。風力や太陽光も結構だが、当面の対策にはならない。しかし、この電力の困窮状況を放置していれば、間違いなく、日本の全産業が衰退する。石油火力は、当然として、天然ガス火力と石炭火力を国の総力を挙げて強化すべきである。もはや、個々の電力会社の投資計画に任せておくべきではない。幸い、天然ガスは、地下水の汚染問題はあるにせよ、世界中でシェールガスブームで沸き立っている。そして、天然ガスは気体であるから、液体の重油より、もちろん固体の石炭より燃焼効率は格段に良いからCO2排出規制にも適合した化石燃料と言える。天然ガス火力発電所なら、東京湾のど真ん中でも建設できるのだから、日本全国にどんどん作ればよい。さて、次に全世界に豊富にある石炭だ。今でも、米国、中国、インドなど世界の主要エネルギー消費大国は石炭火力発電が主力である。なにも日本だけが、良い子ぶって、国を滅ぼすことは無い。日本も、効率の良い、石炭火力発電を、ぜひ先頭に立って目指すべきである。

最後に、少し明るい話をしたい。私が、三菱重工の佃前会長とインドに行ったときに、佃さんから大変良い話を聞いた。佃さんは、インドのアルワリア国家戦略委員会副委員長に対して、三菱重工が開発中の高効率石炭火力発電設備の説明をしたのである。私も、びっくりしたのだが、この最新式の設備では、固体の石炭を2300度と言う高温で、ガス(気体)に変えて燃焼させるのだ。だから、従来の石炭火力にくらべて30-40%も効率が改善されるという。

凄い技術だ。石炭を馬鹿にしてはいけない。石炭がガスになるのだ。何だか、気持ちが、わくわくしてきた。でも、ちょっと変だ。私は、後で、佃さんに質問をした。「2300度って、鉄でも溶けちゃうんじゃないですか? そのボイラーは一体、何で作るんですか?」。すると、佃さんは「良い質問だ。鉄は1500度で溶けてしまう。だから容器の壁の鉄の中に穴をあけてパイプをとおし、そこに高速に水を通おして冷やすんだ。」と教えてくれた。何と凄いことを!武者震いするようなテクノロジーだ。しかも、基本は、石炭を燃やして水で冷やすという単純な話なので、ガンマー線とかベーター線とか難しい話は一切無い。同じ、高度なテクノロジーを使うなら、こちらの方が遥かに筋が良い話だと思った。