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402   ファーウエイ(華為)について

2018年12月11日 火曜日

米中貿易戦争の真只中、トランプ大統領の対中関税政策がクローズアップされる中で、ファーウエイの副会長(CFO)である孟晩舟がカナダで逮捕されたことが大きな注目を浴びている。今回、孟氏は、イラン向けの制裁に対する違反とかの嫌疑で逮捕されたと言われているが、それは実態とは、殆ど関係がないだろう。アメリカは、トランプ大統領就任の、ずっと以前から、ファーウエイを制裁の標的にしていたからだ。

トランプ大統領が次々と表明する政策は、欧州をはじめとする各国から大きな非難を浴びているが、なぜか対中政策だけは、支持されているように見える。世界は、今や、鄧小平時代の韜光養晦(とうこうようかい)政策から逸脱した習近平の攻撃的な政策に大きな危機意識を持っている。それにつけても、中国の産業政策は長期的な視点から見て素晴らしい視点を持っている。中国は、あらゆる産業の中で、特に通信事業を取り立てて力を入れてきた。つまり情報通信技術こそが、国防政策および国内の治安維持にとって最優先の課題だと早くから認識していたからだ。

特にファーウエイは人民解放軍の庇護の元で、非上場の準国営企業として国から長きにわたり手厚い保護を受けてきた。私は、富士通時代、英国や日本国内のビジネスにおいて、ファーウエイと競合したら絶対に勝てないことを学んだ。特に、価格では、逆立ちしても全く勝てる見込みがなかった。これは全く言い訳にしか過ぎないが、ファーウエイは上場していないので、我々と競合するビジネスで、果たして本当に利益が出ているのかどうか全くわからないのだ。それでも、お客様から見ればコストが安いほうが良いに決まっている。

そうした圧倒的な価格競争力でファーウエイは、世界市場で覇者となった。こうしたファーウエイの世界制覇に関して、アメリカは以前から大きな懸念を持っていた。つまり、ファーウエイ製の通信機器には、密かに中国政府が自在にコントロールできるバックドアが装備されているのではという疑念である。今や、近代戦争では、核兵器など、もはや役立たずの過去の遺物になった。ハッキング攻撃、電磁波攻撃、宇宙攻撃といった、新たなテクノロジーを用いた次世代兵器が国防の中心となってきている。

当然、中国は、こうした時代の到来に備えて、ファーウエイを前線に立て、国を挙げて着々と準備を進めてきたが、一方、アメリカも、日本も、英国も、カナダも、オーストラリアも情報インフラは民間主導の自由競争の世界で、国防とは全く無縁の存在として国の関与を控えてきたのだった。トランプ大統領が、未だに42%という信じ難い高い支持率を保っているのは、アメリカが、これまで世界に表明するのを憚ってきた多くのタブーを、あっけらかんとTwitterで表明する素直さにあるのかも知れない。

アメリカは国防上の極秘情報を共有する5eyesという連合体を持っている。つまり、アメリカ、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドという、どんな事態にあっても、絶対に裏切らないアングロサクソン連合体である。トランプ大統領は、まず、この5eyesからファーウエイを締め出して、次に9eyes、13eyesと言った準情報共有連合からファーウエイを締め出して行くだろう。しかし、残念ながら日本は、このどのeyes連合にも参加を許されていない。先の大戦の敗戦国であるドイツやイタリアですら13eyesには入っているというのにも関わらず、日本は未だにアメリカから心底信用されてはいないのだ。

その日本ですらも、ソフトバンクが、いち早くファーウエイを締め出すと表明した。当然、アメリカにおいて、携帯電話会社であるSprintを抱えるソフトバンクとしてみれば、アメリカの国防政策に協力するのは自明である。それでも、情報通信事業というのは国防上の懸念という観点から言えば、非常にわかりやすい。しかし、今後、アメリカは対中国政策として、もっと広範囲な事業に対して制限を加えて来るだろう。

それが、本当に、世界経済にとって正しい政策かどうかは、私にはわからない。それでも、日本は、アメリカに対して、正面から逆らって独自の政策を打ち出すことは絶対に許されない。今後、世界が、グローバリズムからナショナリズムへ、協調から対立へと、その基本姿勢を変化させていく中で、我々は、日本の立ち位置を、もう一度見直さなければならない時期に来ていることだけは、どうも確からしい。つまり、米国の強硬姿勢は、日中関係、日露関係を、従来以上に難しくする。

401   今、ベルリンが熱いのは何故か?

2018年11月21日 水曜日

私が初めてベルリンに行ったのは、2007年6月、ハイリゲンダムG8サミットに参加する安倍総理に同行して、日本―EU ビジネスラウンドテーブルに参加した時だった。ドイツには、富士通とシーメンスの合弁会社の取締役会に出席するため、シーメンスの本社があるミュンヘンには年に数回訪れていたが、シーメンスの祖業である通信事業を興したベルリンに訪れる機会は全くなかった。

ドイツは東西統合の前の首都はボンであり、金融の中心地はフランクフルトで、ドイツを代表する重工業であるシーメンスと自動車の代表であるBMWはミュンヘンが本社なので、製造業の中心地はミュンヘンという印象があり、ベルリンの印象は全く薄かった。それでも、ベルリンを訪れると、やはりドイツの歴史を背負った大都会である。ブランデンブルグ門は威厳あるドイツのシンボルであり、中でもペルガモン美術館は中東の古都バビロンの市街地の城壁をそっくり移設したものなどを見せられると、心底、ドイツの強さに圧倒される展示だと感銘する。

そして、新たに建設された新ベルリン駅は全面太陽光発電パネルで覆われており、当時のドイツの再生エネルギー政策への傾注を沸騰させていた。この時代のドイツの太陽光発電政策は世界から注目されていたが、これは実に巧妙な東西ドイツの融合政策だった。つまり、ソビエト連邦の半導体基地であったドレスデンの設備は、最先端テクノロジーから遥かに遅れたものであり、微細加工が不要な太陽光発電パネルにしか使えなかった。それを国家的プロジェクトとして興したのが、当時世界一の太陽光発電パネルメーカとなったQセルである。

そのQセルが生産した太陽光発電パネルを東ドイツの公共施設に積極的に設置して、その高価な電力を旧西ドイツに購入させて、旧東ドイツへの所得移転を行なった訳である。もちろん、そうした経済合理性がない無理筋の政策は破綻し、Qセルは中国ベンダーとの競争力に敗れて破産、太陽光発電による旧西独から旧東独への所得移転も、旧西独市民の抗議によって終結を迎えることになった。ドイツを範として行われた、高価格FITによる日本の太陽光発電政策もドイツが政策転換した直後に破綻への道を歩むことになる。

そんなベルリンが、今、世界から注目を集めている。シリコンバレーに代わる、世界のイノベーション聖地になるかもしれないと言われているからだ。ベルリンは1944年の陥落から1989年のベルリンの壁崩壊までの26年間の空白を、その後の29年間が穴埋めするどころか、むしろ、リープフロッグ現象でとして世界の各都市を追い抜いてしまったとも言える。元々、東ベルリンは私有地を認めていなかったため公共政策はやりやすい。また、これまでのメルケル首相の積極的な移民政策もあって、ベルリンには優秀な天才達が世界中から集まってきている。トランプ大統領のH1Bビザ制限政策で困っているシリコンバレーとは対照的である。

ドイツの政策は、日本の将来の政策の手本だと思った方が良い。ドイツは憲法で国が借金をすることを禁じており、国家債務はゼロである。その代わり、消費税は20%にも及び、国民にも相応の負担を強いている。そして、ドイツはEUの首領として、アメリカ、中国と対等に並び立つヨーロッパの力を保持するための施策を講じている。いわば、米中への対抗として第三勢力を育む、その象徴がベルリンである。ドイツは、米国のIT勢力に対抗するために、ウーバーもAirbnbも禁じている。そして、今回のEU個人情報保護指令GDPRである。これは、明らかに米国のGAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon) への対抗政策だと思った方が良い。

その上で、ベルリンのタクシー手配アプリで最大のスタートアップはダイムラーが買収して完全子会社とした。ドイツのタクシーは、殆どが、ダイムラー製(ベンツ)だからである。また、カーシェアリングのスタートアップ最大手はBMWが買収して完全子会社とした。BMWは購入者の平均年齢が50代であり、カーシェアリングの中心層である30代の顧客とは競合しないことが分かったからだ。これから繁栄するシェアエコノミーのビジネスにアメリカ勢は絶対に入れないというドイツの決意である。

フィンテックでもドイツは先手を打っている。ベルリン発の「N26」は無店舗銀行として欧州の最大手として、もはや1,000万口座を保有しているという。このビジネスモデルもアメリカや中国のスマホ銀行とは一味違う。N26はパスポートによる申請で口座開設ができる。口座開設が認可されるとMaster Cardのデビットカードが送られてくる。決済は、全て、このMaster Cardで行われる。送金手数料、為替手数料はゼロだが、現金を預け入れる時だけ1.5%手数料をとる。現金の引き出しはATMだけでなく、Master Cardを取り扱う小売店でも行える。また、日頃の決済情報から与信情報を得て、最大1万ユーロまでは即時融資を行うようである。

さらに、ベルリンは、世界最大の「ビーガン」コミュニティーとして、今後の世界の食文化をリードするかも知れない。私は、「ビーガン」という言葉は、先々月、シリコンバレーを訪問して初めて聞いた訳だが、シリコンバレーでも、現在、大きな潮流になりつつある。「ビーガン」とは「完全菜食主義者」であり、いわゆる一般的な菜食主義者である「ベジタリアン」とは全く違う。植物性たんぱく質を素材とした合成肉や、豆乳から作ったヨーグルトなど、たんぱく質をきちんと摂取することによって栄養バランスをしっかり取っている。

なんだか、日本の禅宗による精進料理と似ているような気がするが、今後、世界の人口の半数を占めるであろうと言われているムスリム向けにも、ビーガン料理はハラル認証以上に潔癖な食事なので、きっと流行るに違いない。ベルリンでは、ビーガン専門レストランが沢山あるのだという。そういえば、今、シリコンバレーで流行っている「瞑想」も「座禅」そのものだし、何だか日本文化が世界中からパクられているような気がしてならない。私たちは、自分たちの文化の優れた点が、よく理解できていないのではないだろうか?

今、シリコンバレーにいる優秀な人材は、GAFAのブラックホールに、どんどん吸い取られていく。スタートアップですらも、IPOするより、早い時点でGAFAに買収されることを望んでいる。そして、これまで、世界中からシリコンバレーにやってきた優秀な人材はトランプ大統領の反移民政策で、もはや簡単には入ってこれない。そうこうしているうちに、世界は、あっという間に大逆転が起きる。ひょっとすると、ベルリンが、シリコンバレーにとって代わる日も、そう遠くないのかも知れない。

400 母が亡くなった

2018年10月18日 木曜日

父が亡くなったのは、今から17年前。死去に伴う、相続を含めた様々な手続きは全て母に任せっきりだった。まだ、77歳と若く動作もキビキビしていた母は、あちこちで間違いを指摘され、かなり手間取ったようだが、1人で無事に全ての処理をやり終えたようだ。そこで楽をさせてもらった分、今度は、私が苦しむことになった。

一昨年、突然、自宅で倒れた母を発見したのは毎日訪れてくださる弁当屋さんだった。弁当屋さんから連絡を受けた私は、東名高速を飛ばして、すぐさま駆けつけたが、母は、既に息も絶え絶えの状況だった。救急車を呼んで病院の夜間救急に運んでもらったが、病院に駆けつけてくれた医師の弟は、「こりゃ、もうダメだな」と呟いた。しかし、あの世界大戦を生き抜いてきた母は、見事に蘇生した。

1ヶ月の入院後、そのまま自宅へ戻して再び独居生活をさせるわけにはいかないと、急遽、介護施設を探して入居させたのだが、思いがけず、母は、その施設をとても気に入ってくれた。若い時から群れることが大嫌いだった母を16年間も独居生活させたのは、孤高な母には共同生活が無理だと思ったからだ。しかし、こんなに調子よく、介護士の方や、共に暮らす老人の方々とうまくやっていけるのなら、もっと早く入居させてやれば良かったと、それは、未だに後悔をしている。

循環器内科の医師からは、母が患っている大動脈狭窄症の状況では、余命2年と言われたが、その通りとなった。しかし、その2年間、毎月2回、母を介護タクシーに乗せて通院させたことは、大変だったが、今まで放ったらかしていたことへのせめてもの罪滅ぼしになったかも知れない。母は、94歳になって、さすがに、最近起きたことは直ぐに忘れるものの、昔のことはしっかり覚えており、また滑舌もはっきりしていて、込み入った会話も正常に成立していたので、とても認知症の老人とは思えなかった。やはり認知症という症状は一括りに定義できるものではないと思う。

どこの老人もそうなのだろうが、昨年、母は転倒して大腿骨骨折をして施設から病院に運ばれた。担当医師から「手術しますか?」と問われて、整形外科医の弟に相談したら、「自分が手術したいと言っても、麻酔医は、この年齢なら断るね!」と貴重な助言をくれたので、私は、素直に従った。それで、母は、生涯、自分の足では歩けない体になったが、結果的には良かったと思う。いつも車椅子の生活なので、再び転倒することによる二次災害には陥らなかったからだ。蘇生手術の有効性は、年齢にもよる。

母が残した預金資産は大したものではないが、自宅の評価額が思いの外高く、結局、課税対象になったので税理士に相続税処理を委託することにした。いつも、新聞に掲載される土地の評価額から推定すると、田園都市線沿線の我が家から見たら湘南平塚の実家など、とるに足らないと思っていたら、とんでもない間違いだった。前から、母が支払っている固定資産税が、私と大きく変わらないので変だなと思っていたら、案の定、その心配が現実のものとなった。

これは、全くおかしいと思う。どう考えても、この固定資産評価額で売れるわけがない。それは、その金額で売れたら嬉しいが、絶対にそんなことはあり得ない。もともと、固定資産税は地方税である。地方自治体は、不足する税収を確保するために、あり得ないほどの高い評価額を設定しているのではないか?と疑うのは私だけだろうか?これは全く不条理である。それでも、兄弟3人、誰も要らないという実家は売却するしかない。

評価額を遥かに下回る金額でしか売れないのに、相続税は高い評価額で課税される。その上、ダンピングして売却した金額に不動産売却益の税金が、さらに、また課せられるのだ。だから、日本中に、誰も相続しない「所有不明不動産」が増え続けるわけだ。しかし、私たちは、善良な日本市民であり続けるために、不条理でも、きちんと相続し、評価額を遥かに下回る額でも売却を目指す。本当に、正直者が馬鹿をみる社会である。

相続には、戸籍謄本が必要だが、故人が16歳以降の全ての改正原戸籍を求められる。男性の場合は、それほど面倒ではないが、女性は結婚によって戸籍が変わるので、その分、さらに厄介である。16歳は結婚を許される年齢だから、それ以降の戸籍を求められるのは、「相続人は本当にあなた方だけですか?」という意味である。例えば、私の母は、私たち兄弟3人を産む前に、誰かと結婚していて、相続人は、他にも居ませんか?と言うことが問われている。これが、結構厄介である。

今回、それらも全て取り寄せた。私の息子などは、その資料を見て毎日楽しんでいる。改正原戸籍はNHKが放映している「ファミリーヒストリー」、そのものだからだ。知らざれる、自分たちの祖先の歴史が江戸時代から全てわかる。詳しく読み取ると、昔の人が、いかに大変だったか。幼児の死亡率が、いかに高かったか。子供が産まれないと、すぐに離縁させられたことも。今ではありえない、家を継ぐための長子の改名手続き。今より遥かに頻度の高い養子縁組の繰り返しなど、興味をそそられる色々な物語が見えてくる。

こうした手続きは大変だが、その度ごとに、亡くなった故人の思い出に浸るときでもある。ようやく、母が保有していた墓の承継手続きも完了し、戒名の彫刻も依頼した。来月は、無事、納骨式を迎えることが出来そうだ。貧乏生活の中で、自己犠牲をしてまで、兄弟3人、ここまで育ててくれた母に心から感謝をしたい。