413  日韓関係について考える

2019年8月12日

2018年、日本は外国からの観光客が、ついに念願の3,000万人を突破した。そして、その中身は、中国からが800万人、韓国からが750万人と中韓合わせて半数以上になっている。首都圏の鉄道のほぼ全ての駅で、日本語以外に、英語、中国語、韓国語が併記されるようになったのも十分納得できる。国家同士では、決して蜜月関係とは言えない中国や韓国から、これだけ多くの人々が日本に好感を持って訪れている現実には改めて注目せざるを得ない。そして、多くの日本人も韓国を訪れている。

日韓両国の多くの民間人が、お互いに好感を持って相互に交流しているのにも関わらず、昨今の日韓関係は暗澹たる状況にある。前政権を非難して、自己を主張するスタイルは、どこの国でも政治家の常套手段であり、文在寅政権が、朴槿恵政権が行った対日政策を全て否定したがるのも感情的にはわからないでもない。そうは言っても、文在寅政権の政策が、韓国の将来にとって、本当に得なのかどうかと私は疑問に思わざるを得ない。しかし、我々は、朝鮮半島における南北政権が置かれた状況を、彼らの立場に立って、もっと深く考えてみる必要があるのかも知れない。

そもそも、韓国は、地下資源に恵まれない日本と同様、貿易立国を国の中心政策に置かざるを得ない。そして、韓国が最大の貿易黒字国としているのは中国であり、最大の貿易赤字国は日本である。この意味で、韓国から見れば中国は最重要顧客であり、日本からの輸入品は早く内製化して赤字を解消したいと思っている。そして、韓国経済が大きく低迷し、ウオン安に苛まれているのは、中国経済の低迷ということだけではない。中国は、これまで韓国からの輸入品であった液晶や半導体を急速に内製化しつつあるからだ。

韓国経済の飛躍的な発展は、鉄鋼、造船、液晶、半導体と、かつて日本が得意としてきた分野を国と財閥が一体化して繁栄させ成し遂げられたものだった。一時は、一人当たりのGDPで韓国が日本を追い抜くかという状況にまで到達した。しかし、その全ての業種において中国から追い上げられ、日本の背中はまたさらに遠くなった。今や、中国は韓国にとってお得意様から熾烈な競争相手に変化した。ここで文在寅政権が韓国経済に対する起死回生の一手として考えていると思われるのが、安価な労働力と豊富な地下資源を有する北朝鮮との経済的統合だという推理は、決して荒唐無稽ではないだろう。

第二次世界大戦後、分断された国家は、ドイツ、ベトナム、朝鮮の3カ国だったが、ドイツは東西統一でヨーロッパの最優等生となり、近年、ベトナムもアジアで最も高い成長を示す国家となった。残されたのは、世界で唯一、朝鮮だけである。特に、ドイツが西欧で最も経済が繁栄した大きな原因は賃金が抑制されたからだと言われており、安価な労働力を有した東ドイツとの併合が大きな要因である。文在寅政権は、このドイツを目標としているのではないか。現在、韓国国内では、ブルーカラーの極端な人手不足に悩んでいて、政府が主体となってアジア各国から多くの労働力を補充している。文在寅政権としてみれば、同じ朝鮮語を話す、安価な労働力が目の前に豊富に存在するというのに、なんと勿体無いことと思っているだろう。

世界が、対北朝鮮政策の基本としている「非核化」という問題についても、今の文在寅政権は、本当に大きな問題と捉えているかどうか甚だ疑問である。常識的に考えて、同じ民族である同胞に対して残虐な核兵器を使用するとは考えられないからだ。むしろ、将来の朝鮮半島統一国家として核保有国の資格を得られるというメリットの方を文在寅政権は好ましいと考えているのかも知れない。

もちろん、日本として、こうした文在寅政権の考え方については、全く同意できない話であるが、アメリカは、特にトランプ大統領は、一体、どう考えているのだろうか? 私には、トランプ大統領は、北朝鮮については、もう、どうでも良いと思っているのではないかと思えて仕方がない。アメリカは、かつて、共産勢力が世界で覇権を持つことを阻止するために、多くの自国民の犠牲を伴ったベトナム戦争を仕掛けたが、結果として大敗北をした。それでも、北ベトナムに統一された「新たなベトナム」が中国の属国になることはなかった。鄧小平時代には、中国から戦争を仕掛けられても、ベトナムは決して中国に屈することはなかった。

だから、アメリカは、仮に、在韓米軍を撤退させて、最悪、北朝鮮が韓国を併合したとしても、中国は、朝鮮半島を支配下に置くことは出来ないだろうと思っている。中国とベトナムが、長い歴史の中で、常に、戦ってきたのと同じく、中国と朝鮮半島の間にも長い戦いの歴史があった。韓国は、世界でも珍しくチャイナタウンが存在しない国である。そればかりか、私は、ソウルで中華料理店を見たことがない。韓国と中国との間には、今でも、かつて高句麗であった広大な中国東北部の帰属という深刻な問題を抱えているからだ。こうして考えると、全くの極論だが、アメリカは、中国への牽制として、朝鮮半島に核保有国があっても構わないと考えているのかも知れない。

その意味で、アメリカは、既に、北朝鮮を核保有国として認めても良いと思っているかも知れない。世界で、一度、核を保有して断念した国は南アフリカしかない。今更、北朝鮮で非核化を実現するのは、もはや無理だと思っているだろう。それでも、アメリカを標的とする大陸間弾道ミサイルさえ持たなければ、当面、アメリカにとって実害はない。北朝鮮が、連続して大陸間弾道ミサイルの打ち上げに失敗したときに、実は、アメリカのサイバー攻撃が原因ではないかとの噂があった。アメリカには、その位の技術力は十分にあると思った方が良く、また、迎撃ミサイルで防御するより、はるかに現実的な話である。

以上、私が述べたことは、すべて何の根拠もない妄想だと思って頂いた方が良い。ここで私が申し上げたいことは、日本と韓国の間の政治的な問題は、日韓両国政府だけで解決できる問題ではなく、アメリカや中国やロシアなどを含めた複雑な国際関係が絡んでいるので、直ちにスッキリ解決できる道はないということである。だからこそ、日韓両国間においては、民間ベースの関係をさらに発展させて行く道しか残されていない。そして、それこそが、我々が出来る日韓関係改善の唯一の方法である。

412  日本の深刻な人手不足 (2)

2019年7月2日

6月24日の深夜、たまたま目覚めて見た、NHKのドキュメンタリー番組「ノーナレ」で報道された、今治タオル業界でのベトナム人実習生の過酷な労働実態。私も、これを見て、物凄く腹が立って、その後、朝まで一睡も出来なかった。その後、この番組を見た多くの視聴者の間で「今治タオル不買運動」が炎上している。今治タオル工業組合は、NHKに対して、この報道された企業は組合企業ではないと抗議したが、その後、今治タオル工業組合各社が下請けとして利用していた企業であることが判明し、ネット炎上は、さらに一層燃え盛っている。

今や、日本の深刻な人手不足を補うために、外国人労働者は欠かせない存在となった。農業、建設、小売、外食、介護などの業界では、もはや外国人労働者なくしては、1日なりとも回らない。外国人労働者の存在の是非を論じている余裕は、今の日本にはもはやない。彼らは、日本人と、同じ給与体系、労働規制のもとでは、日本人より遥かに勤勉に働き、生産性も高い。しかし、この外国人労働者を日本人より安い賃金で働く安価な労働者として見るのならば、そうした考えには、もはや持続可能性はない。

もう一つの誤った考えは、外国人労働者の招聘は、単純労働者ではなくて、高度技能労働者に限定するという考え方である。今の、日本で深刻な人手不足に陥っている職種は、どちらかと言えば、高度技能労働者ではなくて、単純労働者だからだ。確かに、どの企業も、大学新卒の採用においても、とてつもなく苦労しており、高度技能労働者も不足しているようにも見える。しかし、世界的に見れば、欧米を初めとして、大学卒の高学歴労働者が大量に余っている。欧米だけでなく、中国や韓国でも大学卒業者が深刻な就職難に喘いでいる。だから、日本の大学新卒に対する採用難は、一時的なものだと思った方が良い。

さらに、二つ目の誤った考え方は、実習制度の名の下に、安価な労働力として、外国人労働者を利用しようという考え方である。冒頭の、NHKノーナレの今治タオルの例が典型だが、もはや、こうした考え方は世界では通用しない。私の友人が、外国人採用の状況を調べるためにフィリピン、インドネシアを訪問したが、その実態に驚いたという。つまり、彼らの給与は日本の5分の一以下であり、日本に働きに来ることが、さぞや憧れだろうという日本側の期待は全く裏切られたというのである。彼らの選択肢は、日本だけでなく、ドイツや中国まで視野に入れており、日本以上に高い賃金で働ける可能性が高いからだ。特に、中国では富裕層の介護施設では日本とは比べものにならない高給が得られるという。

そもそも、フィリピン、ベトナム、インドネシアといった東南アジアの人々の賃金が日本に比べて遥かに安いという感覚自体が誤っている。昨年、どうして3,000万人もの観光客が日本を訪れたかについて真剣に考えて見たことがあるだろうか? まず、3,000万人の観光客の90%近くが、中国、韓国、台湾、東南アジアの人々で、欧米人は極めて少数である。彼らアジアの人々が、突然、日本文化の良さに目覚めたのだろうか?そんなことはありえない。彼らが、突然、日本に押し寄せているのは、日本の物価が欧米に比べて遥かに安いからだ。しかし、物価が安いということは、実は賃金が安いことを意味している。

日本が過去20年間、賃金の上昇が止まっている間に、中国や東南アジアの人々の賃金は10倍以上に上がっている。物価が安いことは、観光旅行やショッピングには大変都合が良いことだが、一方で、賃金が安いことは、出稼ぎに行くには最悪だ。その上、さらに労働条件まで過酷だという噂が広まったら、もう本当に日本に外国人労働者は誰も来なくなる。今、人手不足で悩んでいる企業の殆どは、賃金水準が低い。賃金が安いから、応募者が来ない。一定以上の賃金水準の企業であれば、今でも、人手不足は、それほど深刻ではない。それで、安価な労働力として外国人労働者を採用したがっている。そもそも、そうした考え方が成立しなくなっている。

つまり、誰もが働きたくない低賃金でしか成立しえない産業は、もはや持続性がない。そうした事業は、もう日本では存続できないのだ。それよりも、いかに高い生産性を実現するか? あるいは、もっと高い付加価値を創り出すか?が重要である。ロンドンのウルトラ・ファスト・ファッション企業であるプライマークは、日本で言えば銀座通りに相当するオックスフォードストリートで2,000坪の店舗を有し、価格はH&Mの2/3、英国では一位のアパレル企業となった。ロンドン市内で短納期に縫製することにより、過剰な在庫をなくして、バングラディッシュやカンボジアなどの途上国の低賃金で製造するH&Mに打ち勝った。

今や、日本で働く外国人労働者は、留学生のアルバイトまで含めると300万人を超えていると言われている。これは、全労働者の5%近くにまで達する水準である。日本は、既に、欧米各国と比べても遜色ない移民国家である。東京都内の地下鉄に乗れば、外国人が過半数を占めている車両も少なくない。その内の多くが、どう見ても観光客とは思えない。こうした外国人労働者を、どのようにして日本に同化させるのか? あるいは、英国やドイツが失敗したように、お互いに干渉しないという多文化主義を押し通すのか? 今や、喫緊に、日本の決断が迫られている。

411    日本の深刻な人手不足 (1)

2019年6月8日

最近、私が一番多く要請を受ける講演のテーマは「AIとIoTによる働き方改革」で、お願いされる一番の理由は「深刻な人手不足」である。特に、中小企業の経営者が悩んでおられて、「人手不足」のために事業を譲渡したり清算されたりせざるを得ない状況まで追い込まれている。そこまでは、いかなくても中小企業の経営者にとっては新卒の大学生の採用など夢の彼方の話となっている。一方で、新卒の大学生たちは、かつてない売り手市場で、就職氷河期の時代からは想像もできないような我が世の春を謳歌している。

こうした日本の人手不足は、世界でも稀に見るほどのテンポで加速している少子高齢化から生じているわけだが、少子高齢化による若者の減少は決して日本だけでなく欧州でも以前から進んでおり、この対策として移民の導入が進展してきたという歴史がある。しかし、今、欧州で起きていることは、若者の高い失業率で、このことから移民排斥運動が欧州全体を覆う要因となった。しかも、欧州では大学卒の若者の失業率が大学に進学していない若者の2倍以上あるという。つまり、欧州では高学歴者ほど職を見つけることが困難な状況となっている。日本では考えられない、正に真逆のことが起きている。

欧州と同じことは、韓国でも起きている。70%以上という世界一の大学進学率を誇る韓国では、大学卒の若者の失業率は政権を脅かすほどの深刻な状況にまで達している。両親が教育熱心な韓国では、子供達は親の期待を受けて一心不乱に勉強する。だから、親も子も、大学を卒業したら、その学歴に相応しい職業に就きたいと思うのは仕方ない。しかし、韓国だけでなく、世界のどこの国でも大学卒に相応しい仕事は、実は、それほど多くはない。アメリカでも、大学卒の若者が大学卒に相応しい仕事に従事できているのは半分以下だという。

それでは、なぜ日本だけ、新卒の大学生が、これほどチヤホヤされる、世界的に見れば異常な状況になっているのだろうか? それこそが、日本が抱える深刻な人手不足の原因の一つになっているのではないかと私は考えている。実はOECD加盟の先進国で、ITの普及率が一番高いのが韓国で、一番低いのが日本である。労働生産性においても、日本は、アメリカとの比較においても、例えば製造業・金融業で半分以下、サービス業では3分の1となっている。これも、殆どの場合において、IT活用の差が原因だと言っても過言ではない。

IT業界の仲間との会話の中で、「やっぱり、そうか」と頷く話がいくつかある。例えば、人手不足で悩む経営者から「AI(人工知能)を使って人手不足の問題を解決してほしい」と要請されて訪問し、詳細な事情を伺うと、その半分以上はAI(人工知能)など全く使わないで、従来のIT技術で解決してしまうらしい。それでは、なぜ、そんなに簡単に人手を要らなくしてしまうようなIT投資が、これまで日本で行われてこなかったのかという疑問である。それこそが、日本特有の終身雇用という人事制度ではないかと思われる。

日本の経営者は、終身雇用という壁に阻まれて、人手を介さなくても仕事ができるITシステムの導入を避けてきた。その結果として、現在の深刻な人手不足を招いたと言っても過言ではない。例えば、日本の経営者たちは、ITシステムの導入条件として、従来、人手で行ってきた時に比べて130%以上の効率化が計られないとダメだと言ってきた。業務の効率性が、人手で行なってきた時と同じならば、ITシステムの導入は意味がないというわけである。ならば、ITシステムを使わないで人手で行えばよいというわけだ。終身雇用制度のために、ITシステムの導入で余った人員を簡単に解雇できない日本では、ITシステム導入には、「圧倒的な業務効率向上」という大義名分が必要だった。

一方、一般的に離職率が高い欧米では、従業員はいつ辞めるかわからないので、人手で行うということ自体が事業継続に対して大きなリスクとなる。ある日、突然、担当に辞められたら、大事な事業の継続に支障をきたすので、仕事の人依存性をできる限りなく少なくする。つまり、ITシステムは、仮に、人手で行なっている時に比べて70-80%と効率が落ちたとしても、欧米の経営者は積極的に導入する。人手は少ない方ほど事業継続リスクが少ないというわけである。その結果として、欧米の労働生産性は日本に比べて著しく高くなった。

そうだとすれば、現在の日本の深刻な人手不足の状況こそが、日本の労働生産性を向上させる千載一遇のチャンスになるはずだ。私の講演を聞きに来られている経営者の方々には、「こんな売り手市場の中で、無理をしてレベルの低い新卒まで採用することなど考えたらダメですよ。それは、将来に禍根を残します。それよりも、今まで会社に尽くしてくれた従業員と一緒に効率化を考えて、彼らにより高い給料が払えるようにしましょう」と言っている。

最近、日本を代表するメガバンクが、それぞれ1万人規模の人員削減を行うと発表し、今後の大学新卒採用人数も従来比半減させている。確かに、今、金融機関は日本だけでなく世界中で大変な環境に置かれている。それでも、日本のメガバンクの経営状況は、まだまだ磐石である。それなのに、これだけ大量の人員を減らすのは、単に人が要らなくなったからである。それは、最近流行りの人工知能のせいではなく、欧米では10年ほど前から普及しているRPA(ソフトウエア・ロボット)を導入したら、事務作業が中心のバックオフィスで人が要らなくなったからだ。

つまり、メガバンクは日本企業が、これから進むべき道を先行していると思った方が良い。特にRPAは定型的なパソコンによる事務作業の半分近くを無人化できる。考えてみてほしい、どの会社に行っても、オフィスの景色は全く同じである。机の上にパソコンが置かれていて、各人、画面とにらめっこして朝から晩まで黙々と作業を行なっている。隣の人ともメールでやりとりし、お互いに会話もしない。これなら、毎日、長時間、満員電車に乗って会社のオフィスまで行く必要もなく自宅で仕事をすれば良い。

そこから、テレワークという発想が生まれてきた。しかし、どうだろう、メガバンクが証明しているように、パソコンを用いたオフィスの事務作業の殆どがRPAによって無人化されてしまうのであれば「テレワーク」という仕事も消滅してしまう。そもそも、人手不足は、なぜ起きているのか? 業績とは無縁の無駄な仕事をしていないだろうか? あるいは、RPAで出来るような単純作業を、あえて人間に行わせていないだろうか? 本当に、よく考えた方が良い。

RPAは、とても人工知能と呼べる存在ではないが、今後、本格的な人工知能が普及する時代では、もっと人間でしか出来ないことが注目される。人工知能が普及すれば、単に知識を習得するだけの大学教育は全く無意味なことになり、ボーッと4年間を過ごした日本の大学生には過酷な将来が待っている。勉強するということは、多くの知識を習得することではなくて、頭に汗をかいて懸命に考える(Critical Thinking)ことだと思った方が良い。それは、ひょっとして解のない問題かも知れない。だからこそ、人工知能では出来ないのだ。